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「ゲーゲン+ゾーンディフェンスがこれからのトレンドなのか」J1第27節 鹿島アントラーズ-ガンバ大阪

J1も残りが8試合とラストスパートに入った秋。首位の浦和を追撃する2位争い同士の対戦となった鹿島対ガンバは、期待通りの好試合となってガンバが3-2で勝利し、鹿島と並んで勝ち点で2位へと浮上した。

試合の流れで言えば、鹿島はせっかく序盤に赤崎のゴールで先制点を奪いながら前半終了間際にセットプレイからオウンゴールで同点にされ、後半も20分に土居が見事なゴールを決めるものの、その6分後に追いつかれ、そこから鹿島がガンバを攻め立てるものの決定力に欠けてゴールが決まらず、ロスタイムにリンスが胸トラップから豪快なゴールを決めて劇的な逆転勝ちというドラマで、とても見応えのある試合だったと言えよう。

しかし個人的に試合展開よりも興味深かったのは、両チーム共にかなり似通った守備戦術を取って来ていた事である。それを一言で言えば「ゲーゲン・プレッシング+ゾーン・ディフェンス」になるだろうか。

マイボールから守備に切り替わった瞬間は、相手のボールホルダーに対して前線から積極的にプレスバックを仕掛け、ボールを奪い返せなくても攻撃を遅らせ、相手がビルドアップをし直したら全体が自陣に戻って4-4-2のゾーンを組んで待ち構える。このスタイルがJリーグで好成績を残しているのは決して偶然ではないと思う。

Jリーグでユン・ジョンファン監督時代の鳥栖を除いて正統派のゾーン・ディフェンスを行っているチームは少ないが、その理由は三浦俊也氏や松田氏が率いたチームを見ても分かる通り、若年層からゾーンの概念が無いせいか守備戦術をこなすだけでいっぱいいっぱいになってなかなか攻撃に力が割けない事と、ロングカウンターで点を取れる能力を持った日本人がJリーグにはいない事にあると思っている。

その点、ゲーゲン・プレッシングはそこで奪い返せば日本人が得意な俊敏性を活かせるし、ゾーンを引いたら点を取ることよりもゲーゲンが可能な位置までボールを運ぶ事を心がければ良いのでハードルは低くなる。ゲーゲン・プレッシングと言えばドルトムントの代名詞だが、香川がいなくなってからのドルトムントはゲーゲンとゾーンを試合中の流れで使い分けており、世界的にもオーソドックスなスタイルになりつつある。

ただしゲーゲン・プレッシング+ゾーン・ディフェンスの弱点は、ゲーゲンからゾーンを組むまでに選手が戻るためのタイムラグがある事で、運動量が落ちて攻守の切り替えが遅くなったり、守備組織に緩みが出てゾーンの動きに穴が出来てしまうとピンチを作られやすいというものがある。

この試合で鹿島が押していた時間帯はガンバがゾーンへ移行する前に素早く攻め切る攻撃が出来ていたのに対し、ガンバは宇佐美がスペースへ飛び出さないために速攻がパトリックの飛び出しに合わせる形のみのワンパターンで鹿島に読まれてしまっていた。特に後半途中からはガンバの守備への切り替えが遅くなって鹿島のペースだったのだが、そこで決められず最後にひっくり返されたのはもったいなかった。ともかく互いにレベルが拮抗しているのは間違いなく、まだまだ両チームのつばぜり合いは続きそうである。

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