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「彼自身が望むものとは別の形になった”新しい香川”」欧州CLグループD アンデルレヒト-ボルシア・ドルトムント

どんな強豪でも難しいチャンピオンズリーグのアウェイ戦、それをわずか前半3分に香川のアシストによるゴールで先制すると、後半も香川の起点から得点を重ねてベルギーチャンピオンであるアンデルレヒトに3-0の大勝。当然ながら、試合後は香川への絶賛でニュースは埋め尽くされた。

が、香川自身は体が重かったと語っていたように、後半は点に絡んだとはいえ疲労からか運動量とボールタッチが減ってしまい、前半もアンデルレヒトのドフールにハードマークされてたのもあって、前線でシュートを自分で打つよりは2列目より後ろでゲームメイクをする役目に回ることが多かった。それによって、ギュンドアンとシャヒンを欠いて構成力がガタ落ちしていた中盤が助けられ、より前線に生きたボールが供給される事になったわけで、現在のチーム状況を考えると妥当な役割になっているように思う。

香川はドルトムントでの再デビュー戦となったフライブルク戦後に、マンUで学んだ事を「新しい香川」として見せたいと語っていたが、おそらくそれは「もっと力強くプレイして得点を決める」という形であり、実際にこの試合の前に先発していた香川は、前線に残ったままであまり中盤には下がって来ず、サイドでも1対1のドリブルを仕掛けるなど得点に直結するようなプレイを目指していたように思う。もっとも、後ろからの配給能力がダメダメだったので前線の香川には滅多にボールは回って来なかったが・・・

確かにそれはそれで必要な事だとは思うが、個人的にはこの試合で見せたような「前線で頑張らない香川」にこそ、プレミアリーグでの成長が現れていたのではないかと思っている。

以前の香川はほぼバイタルエリア専用マシンで、スペースが無いとボールを受けてもまずバックパスしてリターンを欲しがり、そのうちボールをもらいにボランチの位置まで下がってはパスをさばいてまた上がって行くという1次元の動きが多かったのだが、今の香川はフィールド上のどこにでも顔を出し、少々プレスを受けても余裕を持って足元でコントロール出来る余裕が感じられ、疲れて動けなくなっても一定の仕事が計算できる万能選手になりつつある。オーバメヤンはともかくラモスとインモービレは点で合わせる選手なので、やはりロングカウンターよりもDFラインとの一瞬の駆け引きを活かせる香川との相性も合っている。

わずか3ヶ月前のブラジルW杯の時は、香川は逆にどこにいてもまともな仕事が出来ない選手に成り下がっていたが、フィジカルも多少は改善しているのかもしれないが、それよりもメンタルが安定しているだけでこれだけ違う選手になるのかと驚かされる。これならアギーレがインサイドハーフで使いたくなるのも当然だ。

ただ、ドルトムントにとって香川の復帰で中盤問題は解決されたものの、相変わらず守備の不安定さは拭えないままである。ポゼッション率が向上した事でこの試合でもゲーゲン・プレッシングらしさが見られたものの、SBとCBの連携が悪くてマークなのかオフサイドトラップなのかの意思統一が出来ず、相手がミスをして助かったが簡単にDFラインを割られて大ピンチという場面を2回も作ってしまっていた。

まあこれでCLのグループリーグ争いは大きく一歩前進。次はリーグ戦で結果を出す番だ・・・とは言え、筋肉疲労が残っているのかまだテーピングもしている香川にとっては、代表戦も絡んでハードな日程が続くのが心配。せめてシンガポールでのブラジル戦のみの出場に抑えて欲しいところだが。

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