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「5バックは細貝のためのフォーメーション?」インターナショナルチャンピオンズカップ決勝 マンチェスター・ユナイテッド-リバプール

ブラジルW杯でのオランダ代表と同様に、新任なったマンUでも5バック戦術を採用してきたファン・ハール監督。もちろん選手の顔ぶれは違うが、戦術的な動きや各選手のタスクはオランダ代表の場合と全く同じと言って良い。

W杯から今までファン・ハール式5バックを見ていて確信しつつあるのは、5バックは決して守備的なだけの戦術ではなくて、チームの中盤を組織から解放するという効果があるのではないかという点である。

今まで守備組織のスタンダードになっていた4-4-2のゾーンディフェンスは、DFと中盤の8人が15パズルのようにスカルトゥーラ&ディアゴナーレで連動する事が前提であり、その組織が漏れ無く遂行されている時は大きな威力を発揮するが、日本のように組織の義務を放棄した選手が1人でも出てしまうと、とたんに守備網に穴が空いて組織が瓦解する危うさをはらんでいる。

ところが5バックの場合は、中盤の守備組織に多少の穴が開いてバイタルへのボールの侵入を許しても、DFのうちの1人がマークに行けばDFラインの幅を残りの4人でカバーする事ができるので、いちいち複雑なディアゴナーレでスペースを埋める必要がない。つまり、中盤が組織だったL字型を作る必要がないのでマンマーク気味にも守れるし、一気に中盤の自由度が上がるわけだ。

これで明らかにマンUの中で恩恵を受けているのがクレバリー。4-4-2のモイーズ時代は、そのフリーダムなポジショニングでゾーンを破壊させ、マンUファンから蛇蝎の如く嫌われる対象になってしまったが、元来彼は細貝と同じゾーンディフェンスに馴染まない猟犬タイプであって、今回のファン・ハール戦術では別人のようにイキイキしている。ザック時代はほとんど使われなかった細貝も、もしアギーレ監督が5バック戦術を採用すると代表での中心選手になるかもしれない。

そして中盤が守備戦術からある程度解放されると言う事は、マタや香川のようなファンタジスタ系の選手にとってもプラスである。が、当然ながらファン・ハールの3-4-1-2ではファンタジスタの居場所は1のところしか無く、この試合でもマタが得点を決めたのに比べて香川はトラップミスがたまたまアシストになった結果だけで、ファン・ハール監督の序列は明らかである。

5バック戦術の1つの弊害として、この試合の香川が出場するあたりから徐々にリバプールにポゼッションで押され始めたのだが、そうなるとマンUは全体的に布陣が下がって中盤と前線の間が開いてしまい、攻撃時には前の3人で攻め切らないといけない状況になりがちになる。

香川の場合、前にパスコースが無い場合はどうしてもバックパスや横パスで組み立てなおそうとする癖があり、そこでミスが出ると決定的なピンチになる可能性が高い。この試合でも、3点目はサイドでヤングがジョンソンを振り切った事で生まれたチャンスであり、それ以外の場面では終始相手のボランチにマークされてなかなかボールを受けることが出来ず、バックパスが危うく相手ボールになってしまいそうになる場面もあった。

もしトップ下でマタからレギュラーを奪うつもりなら、例え厳しいマークに付かれていても自分で局面を打開し、アシストや得点を決める個人能力を高める必要がある。でなければ、CHとして守備力を高めるしか生きる道がない。どちらにせよ、今までの殻を破らないと厳しいことは確かだろう。

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