サイトアイコン 旧閑ガゼッタ

「今度こそ裏目に出てしまったファン・ハールの奇策」ブラジルW杯 準決勝 オランダ-アルゼンチン

派手にドイツが花火を連発した前日の準決勝とは180度変わって、オランダとアルゼンチンの試合はまさに守備と守備、盾と盾のぶつかり合いで、このまま180分間試合を続けたとしても点が入りそうにない展開でPK戦までもつれ込んだ。

オランダはファン・ペルシとデ・ヨングが無事先発に入っての5-3-2という布陣で、守備時は基本的にファン・ペルシを前線に残してロッベンと中盤で4人のフィルタを作ってアルゼンチンのビルドアップを許さず、メッシに対してはデ・ヨングが主にマークをしつつ、5人のDFのうち1枚が体を寄せてトラップのコースを限定させ、すぐさまもう1人がトラップ後のボールを刈るという恐ろしくシステマチックな守備でアルゼンチンの速攻をきっちり封じ込める。

アルゼンチンのほうは予想通り4バックを低めの位置に引いてファン・ペルシとロッベンに裏のスペースを使わせず、SBのサバレタとロホはほとんどCBのような働きで、サイドが低いために2トップへの縦パスに頼らざるを得ないオランダの攻撃をシャットアウト、たまにオランダの前線にボールが入ってもマスチェラーノを中心としたメッシを除く中盤4人がしっかりプレスバックしてセカンドボールを奪い返す老練な守備で隙を作らない。

後半の20分に至るまでは何と両チーム合わせてシュート7本という守り合い、どちらかと言うとイグアインのポストとサイドの裏を取るラベッシでギャップを作り、サイドのコンビネーションで破ってくるアルゼンチンのペースではあったが、そこを過ぎるとアルゼンチンの中盤でのプレッシャーが弱まってオランダが徐々にポゼッションを回復させ始め、81分にペレスに代えてパラシオ、イグアインに代えてアグエロを入れてからはほとんどメッシはボランチのような位置にまで下がってさらに存在感が薄くなる一方。その分、徐々にロホが前へと出てサイドを攻めるがオランダの中央も堅い。

その中でも決定機と言えるのは75分にアルゼンチンはペレスからの速いクロスをイグアインが足を伸ばして合わせてサイドネットに当たったシュートと、後半ロスタイムにカイト、スナイデルとつないだパスにロッベンがゴール前で抜けだしたものの、マスチェラーノが渾身のブロックでシュート阻止ぐたいで、試合は当然のように延長戦へともつれ込む。

延長からオランダはフンテラール、アルゼンチンはマキシ・ロドリゲスを投入、前半は後半の流れを受けてオランダのペースで進むものの、後半になると突然それまで完全に気配を消していたメッシが復活、結果的にパラシオのヘディングでのバックパスになってしまった浮き球パス、マキシ・ロドリゲスが当てそこねたが右サイドのマークをドリブルで置き去りにしてクロスを入れるなど貴重なチャンスメイクをするも得点には至らず、結局最後はPK戦。

オランダはあえてそれまでPK戦には出てなかったブラールを1人目として使う奇策に出たがいきなり失敗、3人目のスナイデルもアルゼンチンGKロメロの好セーブに阻まれてしまう。守備の方でも、3人目の交代枠を使いきっていたために生涯でまだ1度もPKを止めたことがないらしいシレンセンが臨んだのだがこれも完全な裏目に出てしまい、1度はコースを読みながらも手に当てられず、アルゼンチンの4人目マキシ・ロドリゲスのキックを両手に当てながら逸らしてしまう失態で1本も防ぐことが出来ず、結局PK戦は4-2でアルゼンチン。ここまで当たりまくったファン・ハール采配の神通力も潰えてしまった。

これで決勝はドイツ対アルゼンチンという決勝としては史上最多3度目のカードとなったが、1日休みが多くて90分を楽に戦ったドイツと、120分を擦り切れるように走ったアルゼンチン、サッカーのクォリティ、交代カードの厚みともどもどう考えてもドイツが圧倒的に有利なのは間違いない。が、サッカーとは得てして完全優位と思われるほど逆の結果になってしまうもの。ここから先は、本当に神のみぞ知る領域である。

モバイルバージョンを終了