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「いかなる場合であっても殉じてしまうのが自分たちのサッカー」ブラジルW杯ベスト16 ベルギー-アメリカ

今大会は、5バックであったり4バックでもSBが上がらない戦術が目立ち、すっかり守備からのカウンターサッカーが大会のカラーとして確立されてしまった感があるが、どうやらアメリカだけはそんなトレンドなどは全く関係が無い様子である(笑)。

蒸し暑いサルヴァドールでの試合だろうが何だろうが関係なく、試合開始からプレーブック通りに(?)ボールの逆サイドにいる選手がガンガンと駆け上がり、それに連れてSBも前に出る。で、それを研究しているベルギー守備の網に引っかかってカウンターを食らうというアメリカにとっては慌ただしい展開。

それでも何とか前半はベルギーが放った8本のシュートをアメリカGKティム・ハワードが弾き返して凌いだのだが、後半になるとベルギーの攻勢はさらにパワーアップする。

アメリカのゾーンディフェンスは、守備時は4人のDFラインがあまり動かず、中盤の5人がベルギーの攻撃選手をマークしていく形になっているのだが、ベルギー、特にアザールのドリブルが取れなくてマークする選手がDFラインに吸収され、アザールの動きに合わせてベルギーの選手が上がってくるので、他のアメリカ中盤選手までラインに押し込められるという厳しい展開。

ベルギーは後半になると実に21本のシュートを放ったのだが、どれもやはり来るぞ来るぞドカンという感じでコースとタイミングが正直すぎてティム・ハワードにことごとく防がれ、延長に入って投入されたルカクがようやくベルギーに違いをもたらし、1点目は深い位置への侵入からデブルイネのゴールを引き出すと、スルーパスをダイレクトで叩く意表を突いたタイミングでの2点目を決めてしまう。

しかしアメリカは全くヘコむこと無く、点を入れられてからはベルギーのPA内に常時7人の選手を常駐させるという玉砕戦法を敢行、そしてブラッドリーの浮き球に反応したグリーンが難しいボレーを決めて1点差にする粘りを見せる。が、最後のセットプレイでのサインプレーもシュートはベルギーGKクルトワに阻まれて万事休す。ベルギーが結局は押し切る形でベスト8に進んだ。

確かにアメリカの勇猛果敢さと言うか、まるでサンディエゴだろうがイラクだろうが粛々と上官の命令に従って戦う海兵隊のような迷いが一切存在しないサッカーは凄いとは思うし、生で見ていたら感動したとは思うが、録画を冷静に見るとアメリカの健闘はベルギーの拙攻に助けられた面が大きく、下手をすると序盤のミス連発で試合が終わってしまった可能性もあったわけで、もうちょっとアメリカにマリーシアがあれば違った結果になったんじゃないかと思ったりもする。

ただ、アメリカを見ていると結局「自分たちのサッカー」とはどんな場所、相手、コンディションであってもやる事が自然と同じになってしまうぐらいのレベルになってこそ呼べるものであり、某国のように全ての条件がきっちり揃わないと出来ないものは、所詮「自分たちの(やりたい)サッカー」にしか過ぎないのだなと痛感させられる。

4年間任せた末の結果が惨敗に終わったことで、ザックの遺産なんてあるのか?という論調が見られる昨今だが、それまで世界に対して全然点が取れなかった日本において、こうやれば点が取れるんだぞと示してくれた結果は決して小さくないと思っている。その点を取れる自信をどうやって守備やメンタルの安定感に落とし込んで行けるか。協会にはそのロードマップが求められる。

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