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「申し訳ないが、メキシコに親近感を持ってしまった」ブラジルW杯ベスト16 オランダ-メキシコ

今大会も安定したサッカーで決勝トーナメント進出を6大会連続で決めたメキシコだったが、1回戦となるオランダ戦で終始試合を優位に進めながらも残り2分で逆転を食らって負け、これも6大会連続でベスト16での敗退という珍記録に終わってしまった。

決して前評判が高くなかったオランダを死のグループから首位で通過させたファン・ハール監督の手腕に注目が集まっているが、この試合に関しては采配は完全な失敗だったと言える。

まずエースのファン・ペルシが不調なのか暑さのためなのかメッシ以上に動けず、メキシコの3バックの中にすっかり埋没してしまい、トボトボと歩きながらたまに足元でボールを受けるのみという状態で、ロングボールを足先でトラップしてシュートという得意の形が一度あったがボールを抑えきれず、結局76分までプレイはしたが交代時には完全に消耗し切っていた。

スナイデルが意外と頑張ってはいたものの、さすがに1人では前線でのプレッシャーがかけられず、オランダの5バックは前の3人との間が恐ろしく間延びした状態になってしまい、特にWBの前のスペースをメキシコに使われ、そこからのサイドチェンジにFWがDFラインの裏でボールを受けたり、中のポストプレイを経由してワンツー突破を図ったりとメキシコはやりたい放題の状況。

オランダはここまで布陣が間延びしていてロッベンもきっちりマークされているとさすがに得意のカウンターが繰り出せず、マイボールになったら何とか中盤でえっちらおっちらボールをつないで押し上げ、クロスまで持って行くのが精一杯で、前半はメキシコのシュートが6本に対してオランダは1本に終わってしまう。

しかしメキシコもその6度のシュートチャンスにことごとく決めきれず、ようやく後半3分にドス・サントスが先制点をゲットしたが、そこまでのメキシコペースの時間帯で1点しか入れられなかった事がメキシコにとって運命の分かれ道になってしまった。

先制点を奪われたオランダは4バックに変更し、WBだったカイトをSBに下げたが実際にはSHの位置まで高く上がらせ、これによりメキシコの3バックはサイドで数的不利に陥り、オランダがそれまでとは正反対にボールを支配するようになる。そして76分にファン・ペルシに代えてフンテラールを投入してからカイトの輝きはさらに増し、ほぼ全員の足が止まったオランダの中で1人前線を走り回って攻撃の基点を作り続ける。

このあたりからメキシコの運動量も落ちてパスコースを作る動きが出来なくなり、せっかくボールを奪ってもつなぎのミスで失う機会が多くなり、ほぼ4トップ状態のオランダに対してカウンターすら出せなくなってしまう。そして運命の88分に、自陣ゴール前でのクリアにフリーで飛び込んだスナイデルにオチョアが一歩も動けない強烈なボレーシュートを食らい、直後にはロッベンのPA内のドリブルに足を出してしまい、ロッベンはここぞとばかりに倒れこんでのPKで逆転。メキシコ陣営は試合後に審判を罵倒していたが、足は確かにかかっておりこれは取られても仕方ない判定だった。

まあ前半の拙攻と言い、相手のプレッシャーに負けてのパスミス、守備陣の集中力切れによる連続失点と、メキシコのやられ方は申し訳ないけど親近感を覚えてしょうがなかった(笑)。グループリーグではあれだけ老獪な試合運びを見せていたのに、決勝トーナメントでいきなりこんなナイーブな失敗をやってしまうとは、メキシコにもやはりベスト16という限界へのプレッシャーがあったのかもしれないね。

オランダのMVPはスナイデルでもロッベンでもフンテラールでもなく、間違いなくカイト。元祖頑張り系のFWだが、WBからSB、FWとポジションをくるくる変えつつしっかり仕事をこなし、暑さで機能不全を起こしていたオランダを1人で支えた。オランダの次はコスタリカが相手だが、またも会場は蒸し暑いサルバドル。気候が試合の大きな鍵になることは間違い無さそうだ。

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