旧閑ガゼッタ

「低俗なポルノは本当だったのか」2002年日韓ワールドカップ 日本-ベルギー

日本がワールドカップで史上初の勝ち点1、それもグループ最強と見られたベルギー相手の初戦でゲットするという快挙に対して、こともあろうに「低俗なポルノ」と雑誌Numberに書いてしまい、多くのサッカーファンから永遠の敵として金子達仁が烙印を押されてしまった試合。

そこから12年の月日が経ち、そこから数多の試合を見てきた自分がもう一度この試合を見ると、まさかもしかして万が一低俗なポルノに見えてしまうんじゃないかちょっとだけ期待があったので、NHK-BSで再放送していた機会に見てみる事にした。

で、試合を見始めてまず思ったのが、「え、トルシエジャパンってこんなチームだったっけ?」という気持ち。3バックはラインを揃えて上げ下げするのに一生懸命で人を見ておらず、FWがクサビに入ったりサイドにボールを預けても中盤のフォローが無くて孤立、ボールを持ったらひたすら前だけを見て長いボールを入れるばかり。リスク回避の意味合いがあったにせよ、あまりにも可能性がないサッカーである。

一番の問題は中田で、ガッチリマンマークを受けているために何とかプレッシャーから逃れようと左右に動き回るんだけど、前線と連動していないのでコンビにもならず、かと言って中盤に下がって小野や稲本を前に出すわけでも無いので完全な前線のフタになってしまった。

トルシエジャパンのベストゲームであるアウェイポーランド戦では、中田は3ボランチのように中盤でプレスに参加しつつ機を見て前に絡むプレイをしていて、それが中盤の厚みと前線のダイナミズムをもたらしていたのだが、結局本大会ではトルシエの意図に反して中田は最初から最後までアタッカーのフリーマンとしてプレイしたのが最大の誤算だったと言えるだろう。

そして第二の問題は守備戦術の不徹底。当時はフラット3がロボットだロボットだと言われていたが、この程度のオートマティズムは今でも普通に見られる程度の代物である。ただしラインからマンマークへの移行が遅くて何度も相手をフリーにして基点を作られていたし、1失点目で市川がライン統率からズレてオフサイドが取れなかった事、2失点目ではライン裏へのファンデルヘイデンの飛び出しをこれまた市川が見逃してしまった。

失点はどちらも市川が決定的に関わっているが、そもそもチームがオフサイドトラップをかけようという時に中盤がライン統率から遅れる事はあってはならないし、セットプレイからラインが上がるのは今ではほぼ常識であり、ライン裏への抜け出しは中盤が全てマークするのが鉄則である。

今からすると色んな意味で未熟な面が多かったチームだなというのが、この試合を見ての改めての印象だったが、そんな中でも鈴木のゴールから森岡の怪我による退場までのわずか10分間は、おそらくトルシエジャパンが本来持っていたポテンシャルが発揮できた時間だったのではないかと思う。

鈴木のほとんど事故のような同点ゴールによって軛が解かれたかのように選手の動きが良くなり、それまではほとんど無かった両サイドと稲本のオーバーラップが生まれ、それにより中田へのマークがずれてパスコースがどんどん生まれ、3バックも縮こまったラインの形ではなく、早めに相手の前線へとマークを付けつつ余ったDFが攻撃参加する。ここだけは、今のザックジャパンと変わらないダイナミズムが確かにあった。

ただし残念ながら森岡から宮本に変わった事でライン統率重視のディフェンスに戻ってしまい、そこからベルギーに2失点目を奪われて同点で終わった事で、ロシア戦以降は宮本の判断でラインを下げた安全路線のサッカーになり、それによりただでさえ孤立気味だった中田の実効性がさらに低下する事態になって行ったわけだ・・・

もちろん、それは誰か1人のせいというわけではない。戦術が徹底できなかったのは監督の指導力の問題もあるし、宮本がラインを下げたのもそういう状況ならある意味当然の判断だし、もっと早くに宮本が中心になっていたら別の選択があったかもしれない。が、この試合の”10分間”を見るにつけ、こういうサッカーがこの大会でもっと出来ていたならなあと残念に思ってしまう。と考えると、”本番”があっという間に終わったという意味で低俗なポルノという表現は当たっていたのかもしれないな(笑)。