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「今年の戦術的なトレンドは意外な形に」欧州EL準決勝第2レグ ユベントス-ベンフィカ

バイエルン、そしてチェルシーと第1レグを有利に終えてのホーム戦でまさかの結果に終わってしまった流れは、ヨーロッパリーグのユベントスにまで直撃してしまった。しかもユベントスは、ヨーロッパリーグの決勝が自分たちのホームであるユーベ・スタジアムで行われる事が決まっていただけに、二重の意味でショックになった事だろう。

チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグでは、各国の最強クラスのチームが出て来ているだけに、その年の戦術的なトレンドが如実に現れてくる大会なのだが、今年の特徴を一言で言うと「マンマークの復権」という事になるのではないだろうか。

バルサのポゼッションサッカーが一世を風靡して後、そのサッカーに対抗する術として採用されたのが4-1-4-1のようなバイタルエリアに攻撃選手を入れさせない守備が流行るようになったわけだが、またそれを上回るために考え出されたのが「ビルドアップ時の3バック」である。

4-1-4-1にしても4-2-3-1にしても、FWが1人なのでDFに対するチェイスは2人までが限界であり、守備側は3バックにしてみたり、4バックの場合はボランチの1枚が下がったりしてビルドアップ時に数的有利を作り、4バックのSBや3バックのWBが高い位置にいて基点となり、4-4ゾーンのさらに外側から攻めるという形が主流になって来た。

そのビルドアップ3バックへの対抗策としてアトレティコ・マドリーやベンフィカがやって来たのが、相手がビルドアップしている時にマンマークでプレスをかけ、ハーフラインを超えてしまったらゾーンに移行する前方プレスの亜種と呼べる「前方マンマーク」という戦術である。

従来は、最初はゾーンで守って自陣のゴールに近づいたらマンマークに移るというのがセオリーだったのだが、前方マンマークはとにかく相手にサイドの高い位置で基点を作らせないよう、ボールの出し手と受け手の両方に早いタイミングで1対1のプレスを仕掛け、攻撃を遅らせたら速やかにゾーンへと移行して待ち構えるという二段構えになっている。

ユーベはベンフィカが仕掛けたこの「前方マンマーク」によって、彼らの最大の武器であるピルロの速攻パスを封じ込められ、ベンフィカが守備陣掲を整えたところに遅攻をせざるを得なくさせたのが一つの勝因になった事は間違いない。

ただしベンフィカの守備も万能ではなく、ユーベがベンフィカゴールに迫ってもセンターを中心としたゾーン作りに偏っていたため、サイドから逆サイドに振った攻撃に対してはほとんど無防備で、実際にビダルやリヒトシュタイナーがゴール前で完全なフリーになった決定機があったのだが決められず、そういう明らかな欠点があったにも関わらず全体的にはそこを突いた攻撃を仕掛けた場面は何故か非常に少なかった。

これでELのほうの決勝はセビージャとベンフィカの対戦になった。前方マンマークの戦術では単純な1対1の強さよりもスタミナやアジリティが求められるので、それゆえにスペイン・ポルトガル勢が台頭していると言えなくもないのではないか。日本がW杯で勝ち上がる上で、是非とも取り入れて行きたい戦法であることは確かだろう。

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