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浦和の人種差別段幕問題もガラパゴス

3/8に行われた浦和対鳥栖の試合で、一部の浦和サポーターがゴール裏へ入るゲートに「JAPANESE ONLY」と書かれた横断幕が掲げられた問題に関する処遇が決まりました。

Jリーグ側から浦和へは、1.譴責 2.23日に行われる埼玉スタジアムでの清水戦を無観客試合にするという、Jリーグ史上初の重い処分が下されました。

そして浦和側自身の対処としては、3/15の広島戦以降のリーグ戦、カップ戦とも、ホーム、アウェイを問わず、浦和レッズのファン・サポーター全員に対し、すべての横断幕、ゲートフラッグ、旗類、装飾幕等の禁止、今回の差別段幕の掲示を行ったサポーターグループに対する無期限の活動停止と入場禁止処分、3ヶ月間2割の役員報酬減、関係社員の処分が発表されています。

一見すると1人の馬鹿”サポーター”のおかげでクラブが大損害になった、という見方ができるかもしれませんが、個人的にはクラブに対する処分はこれでもちょっと軽いぐらいではないかと思っています。

まず第1に、その段幕が掲げられた時に人種差別ではないかというクレームがあったにも関わらず、サポーターとの合意の上で掲示の可否を決めるという内輪のルールにより試合終了まで放置されてしまった事。もう1つは、人種差別の意図は無かったという当事者の意見を鵜呑みにしてJリーグ側に報告し、リーグからの沙汰が決まるまで自主的に何も決められなかった事。

当然ながら、FIFAの見解においては人種差別的なアピールについて、誰に対してどんな理由があっても、そう取られる可能性がわずかでもあった時点でアウトであり、いかなる猶予や妥協も認めていません。

つまり、浦和の中にあってはクラブとサポーターはなあなあ、ズブズブの関係性が成り立っており、世界的に人種差別の問題がどれだけセンシティブで重大視されているか、全く認識ができていなかったという現実がはっきりしてしまいました。

いくら日本が温和な社会であってほんの出来心で差別意図が無かったかという説明をいくらしたところで、処分が曖昧になってしまったのでは国際的に人種差別を容認する団体、国家であると見なされますし、この問題に関しては神経を尖らせているFIFAからJFAに対する処分、対外活動に対する影響にまで及んでしまう可能性も十分あるのです。

このあたりのガラパゴス的思考は、靖国神社や従軍慰安婦問題を見ても日本の宿痾かなという気がしてしまいます。全て国際的な倫理や秩序、常識に基いて正しく弁明できる理論武装が出来ない限りは、いくら自分たちの都合や感情を理由にしても一切の説得力を持てないという前提が理解できていない。時間が経ったから、反省したから水に流そうじゃないかという気分が先に立ってしまう。

そういう認識の埋められない溝は、やはり第一次世界大戦やナチス・ドイツ、ユーゴスラビア内戦等、人種差別がどれだけ壊滅的な悲劇をもたらしたかが意識に染み付いている欧州と、”ほぼ”単一民族国家で植民地支配を受けていない島国日本で違ってくるのは仕方ないかなとは思いますが、国際社会の一員として生きていく限りは、本音では理解できなくても表面的には最大限に尊重する姿勢が必要だと思います。

今回、浦和側の初動、対応、事後処理は全てお粗末ではありましたが、Jリーグ側がきちんと認識して対外的にも明確な線引を行い、比較的迅速に対処した事は非常に評価したいと思います。こういう事が二度と繰り返されないよう、今回の当事者だけでなく、日本のサッカーファン全員が重く受け止めないといけない事は言うまでもありません。

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