サイトアイコン 旧閑ガゼッタ

「モイーズの戦術は別に間違っちゃいない」欧州CLベスト16第1レグ オリンピアコス-マンチェスター・ユナイテッド

決勝トーナメントに進出した16チームのうちで最弱と言われ、ベスト8進出は決まったかのように抽選結果を喜んでいたマンUが、オリンピアコスアウェイの第1レグでまさかの0-2敗戦という赤っ恥をかいてしまった試合。

香川が途中出場して見せ場ほとんど無く惨敗という試合は、普通だったら華麗にスルーしてしまうところなんだけど、あちこちからあまりにも酷い酷いと評判だったので、怖いもの見たさで観戦してしまった(笑)。で、その感想としては、いやここまで酷いとは思わなかった。

まずDFラインでボールを持ってもFWがポストに下がってきたり、ボランチの1枚が下がってCBが開き、SBが押し上げてサイドから組み立てるといったビルドアップの基本が全く出来ていない。各選手が各自のポジションからほとんど動かないので相手の守備も動かず、ボールの出しどころが無くてDFが左右にパスを出し合うだけ。

たまにしびれを切らしたかのようにルーニーが下がって来てボールを受けてからサイドに振ったりするのだが、オリンピアコスがサイドの縦のスペースをしっかり埋めているので攻撃はそこで糞詰まり。あとは適当なクロスを放り込むかバックパスをして”組み立て直し”をするだけ。結果的に、枠内シュートは80分までゼロという体たらく。

でもね、モイーズを擁護する気持ちはさらさら無いけど、別にそういう戦術でも間違っちゃいないんだよ。スピードと高さを兼ね備えたCBを置いて、守備力のあるボランチと3枚で中央をしっかり固め、ハイプレスからボールを奪って高く上がったサイドへ素早く展開する。そこを基点にガンガン中盤がゴール前に入り込んであっという間に点を取ってしまう。おそらく、モイーズの脳中にあるのはそういうシーンなのだろう。

つまり問題は、そういう戦術を具現化するための選手を選んでいない事にある。リオ・ファーディナンドとヴィディッチのCBは鈍重で全くラインが上げられず、1失点目のシーンなんかPAのリフレクションから誰もラインを上げようとせず全員棒立ち。唯一ヴィディッチだけがノロノロと詰めたもののドミンゲスのシュートからGKの視界を遮っただけ。

2点目にしても、中盤からワンツーで攻め上がろうとしたクレバリーがボールを失い、そこから取り返そうともせずにその場でゆったりジョギング、DFラインとキャリックはスペースを埋めるだけで誰もアタックに行けず。それでもシュートまで時間があったので、誰か1人バイタルエリアに戻っていれば防げた失点である。試合後にファン・ペルシが自分のスペースに入り込んで邪魔をする選手がいると批判したが、個々の問題よりも選手全体が自信を失ってモチベーションが下がっているように見える。戦術云々よりもそれだけで十分監督失格なわけだが。

そんな中で香川が61分から登場したが、何試合も干され続けた挙句にこの試合でも出場から8分間は頭上をボールが飛び交うだけだったのに、中盤の間でボールをもらってターン、早い判断で周りを使うパスと、全くいつもと変わらないプレイをしていたのには驚かされた。普通なら腐ったり焦ったりするものなのに、よほど精神力が強いんだろうね。モイーズの首が飛ばない限りは今期はこのままだろうけど、この様子ならW杯の不安は少し消えたかな。それだけだね、収穫は。

モバイルバージョンを終了