サイトアイコン 旧閑ガゼッタ

ザックが3-4-3を採用した意外な理由

先週の土曜日にスカパーで「スタディオ・アルベルト・ザッケローニ」という、ザックとザックの友人でもあるジャーナリストが対談形式で行う1時間半のインタビュー番組がありました。

その中身に関しては、ザックの監督としてのキャリアであったり、イタリアと日本のサッカー環境について、ミランやインテル、ユーベなどで指揮官をしていた時の選手やオーナーとの関係、マルディーニ、ビアホフ、デルピエロといった当時のザックを良く知る選手の感想といった構成で、それはそれなりに面白くはあったのですが、だいたい今まで何らかのメディアで知られていたものであったり、感想については仕方ないけど互いに当り障りの無いものが多いなという印象でした。

ただそんな中でも、ザックがどうやって彼の十八番である3-4-3戦術を採用するに至ったかという部分については非常に興味深く楽しめたので、その経緯を箇条書きで書いてみます。

  • ウディネーゼに就任した当初から、何とかして攻撃的なサッカーをやりたいと思っていた。
  • 当時のウディネーゼは4-4-2のフォーメションを使っていたが、アタッカーを3人に増やしたいと思った。
  • そこで、3トップを採用していたオランダやゼーマンの4-3-3、クライフバルサの中盤ダイアモンド3-4-3に注目した。
  • バルサにはアマチュア監督時代に研究のために訪れた事があり、大変親切にしてもらった覚えがある。
  • 最終的に中盤フラットの3-4-3にしたのは、ボランチの2名が4-4-2の場合と同じ働きで済むようにしたため。
  • その代わり、ボランチの2人は相当走り回らないといけないが。
  • 3-4-3を実戦で使いはじめるまでには、1年半の準備期間をかけた。
  • きっかけは1997年のユーベ戦で、開始3分に右SBが退場してしまい、4-4-1にする方法もあったが、あえて3-4-2にしてみた。
  • するとリッピ率いる最強軍団ユベントスに対して3-0で勝利するという大番狂わせを演じてしまった。
  • 次節のパルマ戦でも3-4-3を続けようと思い、選手に提案してみた。
  • てっきり反発があるかと思ったら選手からは賛成をもらった。そしてパルマアウェイで2-0の勝利。
  • 最終的にはリーグで5位とUEFAカップ出場権を取る大躍進。3-4-3がウディネーゼの代名詞となった。

この中で特に興味深いのは、「中盤フラットの3-4-3は、ボランチの2名が4-4-2の場合と同じ働きで済む」という部分、そしてその場合はボランチに運動量が必要であるとザックが認識している事ですね。

今まで、ザックは何度も代表で3-4-3を試して来ましたが、ほとんどの場合は遠藤と長谷部という3-4-3のボランチには向かない組み合わせで使っています。ところが、ご存知のように11月の遠征では山口と長谷部という運動量とインテンシティの高い組み合わせにして来たので、それが今後どういう戦術につながるのかが注目されます。

あと、番組を通して再認識したのは、ザックのチーム作りには時間がかかるだろうなと言う事。戦術の指示こそ細かいけれども権威で押し付けるのではなく、選手と対話しながら個性や人格を尊重したチームを作るというポリシーがあり、戦術についてもオフサイドを例に挙げて「ルールで戦術は変わり、戦術の変化にルールが対応する。堂々巡りだからこそ常に修正しないといけない」と語ったように、常に修正を加えて少しずつチーム力の向上を図るタイプである事が分かります。

フラットの3-4-3を採用した理由も、それまでの戦術から大きく変えずに順応性と移行性を考慮した結果である事を見ても、戦術に頑迷な無能、という某方面のイメージとは明らかに異なっています。つーか、ウディネーゼで3位、ミランでスクデットを取った監督を無能呼ばわりってどこまで偉いんだよ、という感じですが(笑)。

ただし無能でないこととチームに合っているかはまた別問題で、ラツィオからユベントスの監督までは短い期間で結果を出せなかったために解任されており、ジャーナリストの方も代表監督という短期で結果が必要な立場で大丈夫なのかと心配されてました。

ただ逆に言えば、今までは各クラブ最長で3年の任期で終わっていたザックにとって初めて4年間を率いるチームが日本代表なわけで、その時間をザックがどう来年の結果につなげてくれるのか楽しみですな。

モバイルバージョンを終了