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「普通の選手になりつつある香川」イングランド・プレミアリーグ マンチェスター・ユナイテッド-アーセナル

現時点ではチームの完成度で差をつけられている首位アーセナルとの試合で、モイーズ監督はどういう戦い方を選択するのか注目していたのだが、実際に取った作戦はモイーズらしくハードワークでプレスをかけ続けるというものであり、それで左SHとして先発に選ばれたのは香川だった。

今回のようなオールコートプレッシング戦術において必要な事は、自分のゾーンに入ったボールホルダーに対するチェックを怠らず、相手のSBが上がったら最後まで付いて行くという、香川と言うか最近の日本代表が大好きなポジションチェンジをしまくる戦術とは正反対な戦術だったのだが、香川は少なくとも60分間はほぼ完璧にその役割を遂行していた。

以前に、モイーズは自分の持ち場を離れてプレイするのをかなり嫌うのでは、という見解を書いた事があったが、香川のプレイには明らかにその指導が反映されており、特に序盤でマンUがボールを奪った時に香川が前線に走り込む場面で、いったん中へ走った後に外側へとコースを変えていた事が2度ぐらいあって、なんだか見ていて涙ぐましくなってしまったのだが、ドルトムントへ復帰だのロイスと交換などという噂が出ている中で、香川がこのチームで生き残るのだ、という非常な決意が見て取れた。

クロップ監督がそんな香川を見たら、「使い方が間違っている!」と激怒して涙を流すかもしれないが(笑)、個人的にはそんな香川の姿勢と努力には諸手を上げて賛成したい。

ドルトムントでの香川は、言わばケーキの上に載せるイチゴのようなもので、まさにチームのサッカーを体現する象徴のような存在だった。しかしマンUでのイチゴは現時点ではファン・ペルシやルーニーであり、香川程度のイチゴの質では、ビッグクラブというケーキのてっぺんに載せるにはまだ足りないものが多すぎるのだ。しかもビッグクラブには次から次へと新しいイチゴがやって来て、上に乗れたと思ったら明日には引きずり降ろされてしまうのが定めとなっている。

であるならば、最初からイチゴではなく、まずはスポンジケーキになる事を目指すべきである。どんなシェフにとってもスポンジの無いショートケーキがあり得ないように、ハードワークを惜しまず攻守に貢献できる選手であれば、どんな監督、どんな戦術でも使われるはず。と言うか、既に長友や内田がそれを証明している。

ある監督の元で1年だけのスターになるよりも、長くビッグクラブで貢献し続ける選手であるほうが、香川にとっても日本サッカーの将来にとってもはるかに価値があると思うのだ。当面は「普通の選手」として求められるタスクをしっかりこなしながら、徐々に自分だけの能力を発揮して行けばいいのではないかと思う。

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