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「世界一の名将の称号はクロップのものか?」UEFAチャンピオンズリーグ 準決勝第1レグ ボルシア・ドルトムント-レアル・マドリー

試合日の直前に、エースであるマリオ・ゲッツェのバイエルンへの移籍が発表された事で、選手やファンに動揺が広がることが懸念されたドルトムントだったが、蓋を開けてみればバイエルンと同じく優勝候補を4-1で葬り去る快勝を決めてみせた。
前日のバルサに比べるとレアルのモチベーションは高く、クォリティとしてははるかに拮抗した内容の試合ではあったが、世界一の名将であるはずのモウリーニョがまんまとクロップの戦術にしてやられるという、別の意味で衝撃的な試合であったように思う。
香川がいた昨年までのように、アウェイでもガンガンハイプレスを仕掛けてしまい、異なる環境と連戦の疲れでプレスの歯車が狂ったところでカウンターを食らっていたナイーブな姿はどこへやら、レアルに対してはマンマーク色の強いコンパクトな守備陣形を形作ってレアルの攻撃を封じ込め、マイボールになればレヴァンドフスキに楔を当てて思い切ってゾーンを上げて攻撃に人数をかけるという、メリハリの使い分けが非常に素晴らしかった。
攻撃時にラインを上げる分、ロングカウンターの危険性は増えてしまうのだが、基点のクリロナには常時複数人でマークをつけ、少しでもボールが停滞すれば前線の選手が戻ってカバーするという、豊富な運動量をハイプレスではなくてカバーリングに割いた、まさにモウリーニョが得意としているサッカーで勝ったという点が驚きである。
逆にレアルは、香川に比べるとゲッツェやロイスが守備をしないために空けがちになるバイタルで基点を作るためか、モドリッチをトップ下にしてエジルをサイドに置く布陣が裏目に出てしまい、中盤で主導権を握ることが出来なかった。後半はややドルトムントに疲れが出てスペースが出来ていたので、そこからの投入のほうが効果的だっただろうし、クリロナサイドの守備の厚さを考えれば、ディ・マリアを右に置いてかき回したほうが良かったのでないか。
そしてモウリーニョによって一番大きな誤算は、レヴァンドフスキが絶好調だった事。先制点はぺぺのまずいマーキングが原因だったとは言え、2点目と3点目は完璧な得点であり、誰があそこで守備をしていても防げないものだった。香川とコンビを組んでいた当初は、ポストは不安定で裏抜けばかり狙う選手だったが、ここまで成長するとは思わなかった。ギュンドアンもそうだが、クロップは素質を見る目も育てる力も一流なのだなと痛感せざるを得ない。
オフシーズンにはゲッツェのみならず、レヴァンドフスキを始めとしてフンメルスやギュンドアンもビッグクラブから狙われる事になるだろうが、クロップさえ残れば大丈夫だろう。逆に、クロップが引き抜かれる時こそがドルトムントの危機になるのかもしれない。

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