「この守備をどう立て直すか」キリンチャレンジカップ2012 日本-UAE

傍から見ると、単に日本の出来の悪い試合にしか見えなかった内容と結果ではあるが、イラク戦を見据えてという点ではいろいろと課題や収穫が多かった、「良いテストマッチ」だったのではないだろうか。
とにかく香川や本田の出来がどうこうと言うよりも、この試合での一番のポイントはレギュラー陣を2人も欠いた守備をどうするかという点にある。
日本の海外組のコンディションがまだ整わず、イラク戦が中4日で待っているスケジュールもあり、全体的にあまり高い位置まで押し上げずに相手へのプレスはさほど強くかけて来なかった。さらに若手主体のUAEはモチベーションが高く、それぞれにパスを少ないタッチでつなぐ技術を持っているので、DFラインの課題がはっきり出てしまった。
まず目についたのが、伊野波のポジショニングの悪さ。相手のFWへのマークに気を取られるあまり、センターにいるときは吉田との距離が近すぎて駒野との間のスペースを散々破られ、サイドで競った時には逆に吉田との距離が離れすぎ、途中から長谷部がカバーに入って修正しようとしていたが、その長谷部ともかぶってしまってほとんど意味を為していなかった。伊野波だけのせいとは言えないものの、後半から入った水本のほうが落ち着いて対処が出来ていたのは事実。そこをザックがどう判断するか。
そして守備と言えば、ようやく酒井高徳がA代表デビューとなったわけだが、これがまた本番だったら絶対にザックが激怒しそうな安易に飛び込んでから交わされるという場面を10分間で2度も作ってしまい、こりゃ不出場に文句を言う前にやる事があるだろうと思ってしまった(苦笑)。ぶっちゃけ、ドイツ1年目から守備のやり方がほとんど変わってないので心配ではある。ちゃんとザックにコーチを受けてるんだろうか?
と言う具合に守備ではかなり多くの課題が見えたわけだが、その代わり攻撃のオプションという部分では嬉しい収穫が多かった。
まずは清武が好調を維持していること。五輪をフルに働き、なおかつニュルンベルクでも最初からレギュラーというハードスケジュールなのに、この試合では最後までしっかり走って技術も戦術眼もぶれず、間違いなく2列目レギュラー陣に限りなく実力で肉薄して来ていることを証明した。
中村憲剛も、攻撃陣が疲れて足が止まって来たところをきめ細かいフォローの動きでパスコースを作り、攻撃のカンフル剤として役に立つ選手であることをアピールした。そしてマイクは言うまでもなくアジアでは高さで脅威となれるし、後半になると試合に慣れてきたのかだんだんプレイがスムーズになって来た。
香川も出来自体は良く無かったが、前節のマンUでの試合でウェルベックに散々苦労したのを見たせいか(笑)今までのようにやたらと中央に入る事はせずに、不慣れなサイドでの1対1の仕掛けにチャレンジしていたことは前向きに評価したい。
これで攻撃でカードを切れる手駒はある程度揃った。あとは、DFライン以外はベストメンバーで来るであろうレギュラー陣がどこまでコンディションを整えて来れるか。この試合のようなプレスしか出来ないとマフムードを無失点で抑えられるとは思えないので、しっかり準備してもらいたい。