「天王山への準備は出来たか?」ドイツ・ブンデスリーガ第29節 ヴォルフスブルク-ボルシア・ドルトムント

次節に待ち構えるバイエルンとの大一番を控えて、絶対に負けられないドルトムント。しかし現在好調のヴォルフスブルクとのアウェイ戦という事で、非常に厳しい展開を強いられてしまった。
この試合でマガト監督がドルトムントに対して行った策は、徹底してドルトムントの選手に対してスペースと時間を与えない事。
後ろの8人でコンパクトなゾーンを高く引いてドルトムントの前線のスペースを消し、2トップのマンジュキッチとヘルメスはCBのフンメルスとスボティッチに圧力をかけ続ける。そして攻撃のキーマンである香川に対しては、常にポラークを中心としてマンマーク気味にプレッシャーをかけ続ける。
事実、この守備の狙いはまんまと当たり、ドルトムントのパスワークを寸断して右サイドのデヤガーなどにボールを集め、SBが高い位置取りをするドルトムントがカバーに戻りきらない内に個人技で切り崩す攻めでドルトムントを脅かす。
しかし、プレスを受けての苦しい態勢でもボールをつなげられる各選手のテクニックで徐々にドルトムントがポゼッションを回復すると、香川の本領がいよいよ発揮される。
まず左サイドでプレッシャーを受けながらレヴァンドフスキに絶妙なスルーパスでGKとの1対1(レヴァンドフスキは決められず)を演出すると、22分には芸術的なアウトサイドのスルーパスからペリシッチが抜け出し、今度は折り返しをレヴァンドフスキがらくらく決めて先制点をゲット。
後半開始早々にも、左サイドでのつなぎからゴール前での混戦になったところで、ギュンドアンが足元の争いから上手く抜け出し、ファーサイドへのループ気味のシュートで2点目を決め、これでドルトムントは楽になるかと思われた。
しかし、前回シュツットガルトに追いつかれた試合でもそうだったが、最近のドルトムントはペースを落とすとどこかでミスを犯して失点してしまうパターンが多く、案の定61分にデヤガーとの1対1であっさり左サイドを突破され、フリーで出されたクロスをマンジュキッチに頭で決められてしまった。
そこからはホームのヴォルフスブルクに勢いを持たれてしまい、途中から投入されたイラーチェクに上手く中でパスをさばかれ、マンジュキッチやヘルメスのロングボールに対しても高さで劣勢に立たされるなど、攻撃に人数をかけて来るヴォルフスブルクに対して何とかギリギリで凌ぎ続ける。
もちろんドルトムントにもカウンターのチャンスは度々あったのだが、香川のシュートチャンスにはヴォルフスブルクのDFがギリギリで体を投げ出すドイツらしい集中力で追加点を与えない。
84分にマートルングが2枚目のイエローで退場してもヴォルフスブルクの攻勢は止まなかったのだが、ロスタイムにロングボールのこぼれ玉を拾ったレヴァンドフスキが、今度はGKとの1対1で落ち着いてタイミングを外したトーキックを決め、これでようやく勝負有り。
ドルトムントにとってはいろんな意味で非常に重圧がかかって苦しい試合だったが、何とか乗り切ってバイエルンとの直接対決を勝ち点3差で迎えられたのは大きい。バイエルンもCLをこなして来た影響からか、アウグスブルクに対しても2-1と苦しんでいたようで、次の試合はミッドウィークでの開催になるだけに、どちらもコンディション維持がキーポイントになるだろう。
香川については厳しいマークを受け続けて得点こそならなかったが、得点チャンスにはほとんど絡む貢献ぶりは健在。しかし最近は後半に疲れてプレイ精度が落ちる傾向があるので、とにかくしっかり休んで天王山での結果につなげて欲しいところである。