「もはやなでしこの背中が眩しい」キリンカップ女子 日本-ブラジル

相手はブラジルとは言えエースのマルタがいないし、日程的には日本のほうが有利だったし、日本の先制点は相手のオウンゴールだし、途中でブラジルにPKが与えられてもおかしくないシーンがあったしで、必ずしもこの得点差が両チームの力をそのまま表しているとは言えないが、それでも優勝には3点差以上の勝利が必要という試合でそれをやってのけたというのは見事というしか無いよね。
初戦はアメリカ相手に0-3の大差で敗れたブラジルだったが、そこで1試合こなした事で体が動くようになったようで、序盤は日本に対してガンガンと高い位置からプレスをかけて来た。
やはり大黒柱の澤を欠いている日本は、どうしても安全に短いパスをつなぐ事しかできないので、ボールホルダーとそこに近い選手に対して集中的にプレッシャーをかけて来るブラジルの罠にまんまと嵌ってしまい、ボールロストをしてはゴール前まで持って行かれる苦しい展開になってしまう。
日本は16分にラッキーなオウンゴールで先制してからようやく落ち着きが出始め、それまで無かった縦に入るクサビパスから早くつなげる攻撃が機能し始め、プレスの第一波を交わしさえすればスペースがあるブラジルに対して優位な状態に持ち込むが、どうもバイタルエリアから攻めを急ぎすぎて相手のリーチに引っかかる場面が目立つ。
逆に前半終了間際には、ボランチに入った田中のボールロストからゴール前でFKを与えてしまい、これを直接決められ、同点にされたところで前半を折り返す。
後半になると佐々木監督のハッパが効いたのか、そこまではひたすらパスで交わそうという姿勢が目立っていた日本が、競り合いや1対1での勝負を恐れずプレイするようになり、相手の運動量が落ちて来たのもあって日本が試合のペースを奪い返す。
そして58分に伝家の宝刀宮間のCKから永里がニアで合わせるゴールでリードを奪うと、日本らしいスペースへとどんどん人が飛び出してつなぐ攻撃から最後はGKが弾いたボールを宮間が押し込んで3点目。
そこからブラジルも意地の反撃に出て試合は膠着状態に陥ったが、最後は近賀のクロスに途中出場の菅澤がスライディングした足でコースを変える技ありのシュートを決めて、きっちりと優勝条件である3点差を埋め、総得点でアメリカを上回ったために単独優勝というおまけも付くという、これ以上ない結果を収めてしまった。
とにかく個人的に感嘆したのは、優勝をノルマにしてきっちり結果を出した点もさることながら、選手全員がミスや失点に対しても全く動じる気配がなく、最初から最後まで落ち着いてプレイしていた事である。
失点に絡んだ田中はもちろんの事、序盤はミスが非常に目立った宇津木にしても、ああいうプレイをやってしまうとあっという間に舞い上がってその後はプレイがズタボロになったりするのが、特に日本男子のユース世代の常識なのだが、彼女らはなでしこの中では若手で大舞台の経験が足りないはずなのに驚くほど動揺を見せなかった。
澤がいなくても誰が出ていても、チームの中に確固たる自信がみなぎっていて、大崩れする事無くチャンスを逃さずモノにする。うむ、これは全くサッカー強豪国そのものではないか。あまりに彼女らが眩しすぎて、本田や遠藤が抜けただけでメロメロになってしまう男子が恥ずかしうなるくらいである。つまりそれだけ、日本がW杯優勝て手にしたものが大きかったという事なのだろう。
いやが上にも世間が盛り上がるであろうロンドン五輪に向けて、あまり過度な期待はかけたくないという気持ちについなってしまうわけだが、もはや彼女らにそんな心配は全く必要ないのかもしれないね。