「また1つステージを上がったなでしこジャパン」アルガルベ杯 決勝 日本-ドイツ

土壇場の90分目で同点に追いつきながら、その直後にゴールを決められて敗戦と、非常に悔しい結果になってしまったドイツ相手の決勝戦だったが、それまでウズベク戦やACLなどでの男子サッカーの情けない姿を見ているだけに、女子の粘りや逞しさには清々しい気分にさせられた。
しかも、この大会での佐々木監督の選手起用は、多くの選手を試しつつ色々なポジションで試すという方針で一貫しており、ドイツとの決勝でも熊谷や近賀、福元に代えて宇津木、有吉、海堀を起用し、後半から有吉を残して鮫島を代えるという、勝利第一では考えられない起用である。
そして、この決勝戦でのドイツは完全に日本を研究していて、ボランチを中心にショートパスで組み立てる日本に対し、DFラインを積極的に押し上げて中盤のスペースを無くし、1人のボランチに対して2人がかりで猛然とプレスをかけるサッカーをやって来て、特に前半の日本はパスワークのキーウーマンである宮間がボランチにいた事もあって、そこを完全に狙われてしまっていた。
わずか前半の22分で0-2にされた時は、さすがに今日はちょっとダメかもなと思ったのだが、川澄がワンチャンスで素晴らしいコースに決めるシュートで1点差に迫ると、後半からの選手交代が功を奏して流れが変わり、88分にPKを与えるまでは完全に日本の流れだった。
アメリカ戦もそうだったが、W杯の時にはほぼ一方的に防戦を強いられていた中でかろうじて勝った(引き分けた)相手に、90分の中で日本がペースを握る時間帯を、超弩級大黒柱の澤を欠いて上で作れたということは、大会前からは到底考えられない成長ぶりである。
ぶっちゃけ、W杯で優勝したとは言え、日本はまだまだ実力的にはダークホースに過ぎない存在で、澤の状態次第では下手をすると五輪で散々な成績に終わってしまう可能性もあるなのではないかと思っていたが、そんな心配は彼女らに失礼だった。この大会で日本は名実ともに世界の強豪国である事を、自らの力で立派に証明して見せたのだ。
確かに準優勝という結果は悔しいものではあるけども、佐々木監督や日本の選手にとっては五輪、そして近い将来に必ずやって来る、澤が引退した後の時代に向けての自信につながる良い大会だったと言えるのではないだろうか。