「名門市船の復活なるか」高校選手権 準々決勝 矢板中央-市立船橋

プリンスリーグとは違って試合時間がハーフ40分と短い高校選手権の場合は、ポゼッションをするよりもスタミナが続く限りプレッシングしてショートカウンターを図るほうが効果的と言われているが、まさにその典型的な例と言える試合であった。
特に矢板中央はほぼ4-1-4-1のようなフォーメーションを崩さず、後ろの4人はほとんど上がらずにボールを奪ったらほとんど前の3人だけで攻めるカウンターを狙ったのだが、市船の前線からのプレッシャーに負けて精度のあるロングボールが出せる、その狙いはほとんど機能しなかった。
市船のほうもコンパクトな守備から早い展開を狙っていたが、矢板中央の分厚い守備に序盤は攻撃が機能せず。しかし、途中から高さのある岩渕にボールを集めてセカンドボールを拾う形で突破口を開くと、20分にFKからフリーで飛び込んだ小出が頭で決めてきっちりと先制点を物にする。
そこから矢板中央は反撃に出ようとするのだが、後ろの4人と中盤以前の選手に距離が生まれてしまい、スペースでセカンドボールを拾われては逆襲される悪循環にはまったが、何とかGKの好守で踏ん張り、市船も自己満足的な個人技でチャンスを無駄にしてしまう事も多く、なかなか追加点が生まれない。
後半から矢板中央はエースFWの石井を投入すると、ようやく前線でポストプレイによる基点が出来るようになって好守のバランスが取れるようになったが、市船の全員がボールに対してプレスをかける意欲は落ちず、試合は膠着状態に。
そして試合終盤の75分に、市船はCKからエアポケットのようにフリーになった岩渕がロビングのヘディングを決めて2点目を決め、これで勝負は決まってしまった。
力の差から言っても順当と言える市船の勝利だったが、前半終わりごろの良い時間帯の時に、見境のない個人技でミスミスチャンスを潰してしまっていたのはちょっと気になるところだ。バルサの選手があれだけ素晴らしいサッカーを見せられるのも、GKとの1対1でさえプレイの選択肢を3つ以上持てるような冷静な判断力と視野の広さがあってこそであり、どこでもいつでも相手をぶち抜ける能力があるわけではない。
次の大分相手の準決勝でも市船が有利であることは確かだろうが、冷静な判断でチャンスを確実に決めて行かないと勢いに乗っている相手だけに足元をすくわれることになるだろう。