「無得点こそが収穫?」キリンカップ2011 日本-チェコ(0-0)

ペルー戦に引き続いて、結局キリンカップをスコアレスのままで終わってしまった事で不満を覚える人は多いかもしれないが、それだけペルーやチェコが最後まで集中力高く試合をやってくれた証拠であり、まずはそれが一番の収穫ではなかったかと思う。
以前であれば、日本で行う親善試合だと、アルゼンチンは比較的真面目に試合をしてくれたが、特に欧州勢については散々で、2009年のキリンカップで来日したペルーとベルギーがろくなチームではなかった事を考えると、いかに2010年を境として、日本に対する各国のリスペクト度合いが変化したかというのが良く分かる。
今後の他国がどういう姿勢で日本にやって来るかは分からないが、こういう試合が常に出来るのであれば、それほどホームの親善試合を敵視する必要はないのかもしれない。
という部分はさておき、昨日のチェコ戦について。
まず最大の注目点であった、3-4-3のフォーメーションがどうだったかという点については、やはりあまり機能しなかったと言っていいだろう。
チェコが自陣に分厚い守備網を引き、特に長友のサイドを警戒して常に長友へのパスコースを切って縦を塞いでいたために、後半になってスペースが出来るまでは長友に良い形でパスが通る形がほとんど作れなかった。
内田のサイドは比較的スペースがあったが、シャルケでの内田は後方でビルドアップしながら時折タイミングを見てオーバーラップする形が多く、サイドでの1対1はファルファンに任せるパターンが多かったので、昨日のように高い位置からスタートして常に勝負を仕掛けるようなプレイには慣れていないのだ。
1トップの李は、ペルー戦での前田に比べるとまだ何とか動いてパスをつなごうという意欲を見せていたが、いかんせん同じくシャドーストライカータイプの岡崎と組んでも、フィジカル自慢の選手が密集した前線で安定したキープはどのみち無理があり、結局はボールの収まりどころとして本田に頼らざるを得なかった。
その本田だが、FKの精度を除けばプレイ自体は非常に安定していて攻撃の中心になってはいたが、前線にスペースが無くてサイドも最初から上がり気味な事で中盤に下がってくる形が多くなり、点に直結する仕事という面では不十分だったと言える。
それでも、もっと相手のバイタルでダイレクトパスをつなげられれば、いかに相手が引いて守っていても裏の狭いスペースに対して高い位置にいるはずの長友や内田が飛び出して守備を崩すことは可能だったとは思うが、まだコンビネーションや相手のフィジカルに慣れてない事もあってか、そういうチャレンジは少なかった。
収穫面については、やはり交代で入った槙野を含めて、3バックが前のペルー戦に比べるとずっと安定していた事だろうか。3バックはSBとしての働きが求められる事を考えれば攻撃面で物足りなさはあったが、まずはハイボール攻勢に対しても安定して跳ね返せていたことは良かった。これで少なくとも、3-4-3にしたら守備がボロボロになりましたという事態に陥る心配は無くなったと言える。
ザックも言及しているが、今の日本の選手層を考えると、低めの位置から選手が動いてスペースを作りながらパスを回せる4-2-3-1の方を基本線として、相手が疲れてスペースが出来てきたら3-4-3で高いサイドを利用したボール支配を狙うほうがいいように思う。
次は8月の韓国戦。この試合はAマッチデーなので欧州組の参加が可能になるが、ザックは果たしてその試合を本番の予行演習とするのか、はたまた選手選考のテストに当てるのか。海外組のシーズンスタートに当たる時期だし、3次予選も欧州組には厳しいスケジュールを強いられるのは確実なので、ペルー戦とチェコ戦の安定感のギャップ、つまりは国内組のレベルアップを考えなければならないはずなのだが・・・さてどうなるか。