「日本、中東の罠から九死に一生を得る」アジアカップ2011 ブループB シリア-日本(1-2)

いや~、やっぱり勝ったからこそ言える話だけど、本当に本当に苦しい試合だった・・・
日本のスタメンはヨルダン戦と全く同じメンバーと並びで、これはどうかなと不安に思いはしたのだが、日本の選手は初戦とは見違えるようにキレのある動きを見せ、吉田のフィードや長谷部のサイドチェンジ、遠藤の縦パスなど組み立ての早さは段違いのレベルを見せた。
が、サウジを下したシリアの強さは本物で、激しいプレスと寄りの早さでバイタルエリアから先では日本にほとんど仕事をさせず、日本はセットプレイから前田がフリーでヘッドを放つ場面はあったが、ゴールの枠を捉えられず、日本にとっては嫌な展開。
それでも、パス能力で上回る日本が30分を過ぎるとセカンドボールを支配できるようになり、35分に本田の右サイドへの飛び出しから香川が中央で粘り、最後は松井>長谷部とつないでゴールへ流しこみ、日本が待望の先制点を手にする。
その後も気落ちして動きが鈍くなったシリアに対して日本がサイドを中心に攻め立てるが、余裕がありすぎたせいか日本は個人プレイが多くなってしまい、みすみすチャンスをフイにするパターンが多かった。そして、ここで2点目を物に出来なかったことが、後に大きなピンチを招くことになる。
後半に入ると、シリアは前半に中盤の低い位置でボールをさばいていた遠藤にマークを付け始め、日本のビルドアップがギクシャクするようになり、日本選手も前半のリードで気が抜けたのか、出足でシリアの選手に遅れをとるような場面が目立つようになる。
その不安が的中したのが25分で、自陣の深い位置でボールを持った長谷部がバックパス、これを長友がGK川島に渡すように見送ったが、シリアの選手に詰められて余裕が無くなり、苦し紛れに蹴ったボールが今野に当たったと誤審され、オフサイドポジションにいたシリア選手を川島が手で倒してしまい、レッドカード&PKをもらってしまう。
同点&10人という絶体絶命に陥った日本だったが、その窮地を救ったのが岡崎だった。PKを決められた直後に、遠藤からのロングボールをPAの中で受け、シリアの選手に囲まれながらも粘って倒されたところでPKの笛。こういうファールはアウェイだと取ってもらえない場面が多いのだが、川島のレッドが日本側からすると明らかな誤審だっただけに、審判もバツが悪くて帳尻合わせをしてくれたのだろうか。
キッカーは本田で、彼の蹴ったボールは直前でコースを変えたせいかミスキック気味になり、ど真ん中に飛んだボールはかろうじてシリアGKの飛んだ足の間を抜けてヒヤヒヤさせられたが何とか2点目が決まる。
その後は当然ながら防戦一方になるが、至近距離からのシュートも川島に代わって入った西川が落ち着いて抑え、6分という非常に長いロスタイムもなんとかかんとか凌ぎ切り、日本は苦しく価値のある勝ち点3をもぎ取った。これで、日本はサウジを下したヨルダンと並んで勝ち点4。得失点差は同じだが、総得点で日本が1上回ったのでグループ首位に立ち、サウジ戦引き分け以上で日本の勝ち抜けが決まることになった。
とりあえず星勘定的には楽な立場に立てた日本だが、この試合の後半を見ても初戦よりは良くなったとは言え、90分間集中して戦えるだけのコンディションには達してないのは確かで、グループ敗退が決まったサウジだからと油断していると、プレッシャーも失うものも無いサウジにのびのびプレイさせてしまう事が十分予想されるだけに、これからさらに体調を追い込んでいかないと厳しいだろう。
そして、もう一つの懸念は前田と香川のフィジカル不足。前田や香川は狭いスペースでプレイするテクニックはあるが、本田のように体で押さえ込めるわけではないので、他の選手と良いタイミングでボールを受けたり渡したりという関係が出来ないと彼らは生きて来ない。
香川についてはドルトムントでもあまり良いプレイが出来ていないサイドでのポジションで気の毒な面はあるが、シリアのようなバイタルを一瞬でもフリーにさせてくれない相手には本田のほうが効果的だった事は確かだ。ただ、これから日本がドルトムントのようなパスワークになるとは限らないし、日本がアジアカップ、そしてブラジルで勝つためには香川の力が絶対必要になるので、香川も苦しいだろうが、孤立する中でも自分を輝くかせるようなプレイの幅を身につけてもらいたいものである。