「フィンケサッカーの不幸を象徴する試合」天皇杯準々決勝 ガンバ大阪-浦和レッズ(2-1)

ここまで勝ち残ってACLへの希望を残していた浦和だったが、延長の末にガンバに敗戦、フィンケ監督とポンテ、細貝にとってはこれが浦和での最後の試合となってしまった。
フィンケ監督の目指すサッカーは、選手同士の間隔を5m程度にまで縮め、その中で早いパス回しをして崩していくサッカーなのだろうけど、フィンケ監督にとって誤算だったのは、それが日本では決して珍しくないタイプのサッカーであり、かえってドイツの伝統的な、正確に長いボールを蹴れる選手が日本には極めて少なかったというところだろう。
この試合のレッズは、ガンバを押しこんでパスは回すのだけど、サイドチェンジや縦へのフィードがほとんど無いので、相手の守備陣形が整っている中での攻撃にならざるを得ず、結局ほとんど決定的なチャンスが作れない。
かえって、ガンバが盛り返した後半になってから、ガンバ陣内に出来たスペースをエジミウソンやポンテ、田中、エスクデロという個人能力の高い選手が活かせるようになり、後半25分には遠藤にデンマーク戦ばりのFKを決められたとは言え、36分には波状攻撃から宇賀神がミドルを決めて同点に追いつく粘りを見せた。
しかし延長戦になると、前線を増やしたおかげで後ろがスカスカになり、何度かルーカスにスペースを使われて危ないシーンを作った挙句、最後は宇佐美にGKの脇を抜かれて決勝点を決められる結末になってしまった。
浦和の攻撃の起点と高さを一身に担って来たDFの闘莉王を放出し、その代役として獲得したスピラノビッチが怪我ばかりでほとんど働けず、本職じゃない山田暢久をCBに使わざるを得なかったのが最大の誤算であり、それが攻守に渡ってフィンケサッカーを機能不全に陥らせた今期を、まさに象徴するかのような内容と結末になってしまったと言える。
とは言え、安易に前後分断サッカーに戻すことをせず、最後まで若手の起用にこだわったフィンケの姿勢は、浦和に対して少なからず変革をもたらした効果があった事は確かだろう。これをさらに継続発展させるのか、それともまたご破算で一からつくり直すことになるのか、次こそはしっかりと監督を全面的にサポートするような体制を作り上げる事にフロントは集中するべきだろう。