「ザッケローニ生解説@ミラノダービー」イタリア・セリエA第12節 インテル-ACミラン(0-1)

日本代表ザッケローニ監督が、生出演と解説をするという事で、ある意味試合よりもそっちが楽しみだったミラノダービー。
ハーフタイムや試合終了後に、ザックはたっぷりと試合のポイントを解説していたのだけど、例えば10人になって引いたミランを崩すためには、中盤からサイドチェンジを行い、スペースに上がったSBとのコンビでサイドから崩すという事をちゃんと説明していて、試合の分析能力や戦術を分かりやすく指示する能力が、そこらの解説者が色を失うぐらいのレベルだと言う事を見せ付けていた。
これがトルシエだったら、スタジオの戦術ボードをひったくって駒を動かしながらペンで矢印を書きなぐっていただろうし、オシムならインテルの不出来にため息と皮肉をてんこ盛りにしていたであろう事を考えると、自分の試合だと当然違うんだろうが、ザックのあまりにも冷静沈着な態度が、現役監督特有の生臭さや情熱といったものから離れているように見えて、ほんの少し不安になってしまったのも正直なところである(笑)。
試合は、サムエルやカンビアッソ、ムンタリなどを軒並み怪我で欠いた野戦状態のインテルが、何とかこの試合からはマテラッツィやスタンコビッチ、体調不良だったスナイデルを先発に揃えては来たものの、コンビネーションという言葉からは程遠い攻撃で、ゾーンを引いて8人でがっちり守るミランに対し、特に前半は左サイドに選手が固まって交通渋滞を引き起こすだけで、全くチャンスらしいチャンスを作ることが出来なかった。
そして守備では、マテラッツィを入れたはいいもののラインの統率が全く取れず、12分にはインテルの不用意に高く上がったラインの乱れを突いて、イブラヒモビッチがセードルフのロングパスに抜け出し、これをマテラッツイが後ろからスライディングしてしまい、微妙な判定ではあったがPK。
その後も、前線に選手は上がるんだけど皆足下へのパスになってしまうインテルは、当然守備へと切り替える際には、選手がそこまで足を止めているので一瞬出足が遅れてしまい、プレスに穴が開いてDFラインの裏へとパスを通されてしまう場面が多く、良く前半は1点で済んだなという展開だった。
逆にミランからすると、あれだけのチャンスで前半1点に終わり、それもザックが不安点として指摘していたのだが、後半15分にそれは的中し、そこまでエトォやスナイデルを良く押さえ込んでいた右SBアバーテが小競り合いをして2枚目のイエローで退場してしまう。
しかしインテルもべた引きになったミラン守備陣を最後まで崩せず、こういう時に頼りになるはずのスナイデルのFKやミドルもこの試合では決まってくれず、ミランは何とかPKの1点を守り倒して逃げ切った。
インテルは、36分に中盤左のオビが怪我で退場し、代わったコウチーニョが右に入った事で一時的にバランスが良くなったのだが、ミリトも怪我で後半にパンデフを入れ、4-3-3に再び戻した事でまた流れが悪くなってしまった。
怪我人が多くてコンビネーションに欠ける時は、4-4-2でサイドの役割分担をはっきりさせてインテル自慢のフィジカルで押し切るほうが良かったように思うのだが、あえて4-3-3にこだわってしまうのは、あまりにも偉大な結果を残してしまったモウリーニョに対するベニテスの変なプライドがあるのかもしれないなと思ってしまったり(笑)。
ミランは、パトとピルロが先発から欠け、セードルフをトップ下に入れて中盤を厚くした事が結果としては当たった形。ザックさんやアンブロジーニらベテラン勢が良く奮闘していてチームの勝利を陰で支えていた。これで一応首位はキープする事にはなったが、CLを見てもまだ強さを見せるところまでは持って行けてないので、セリエの混戦はまだまだ続きそうだ。