「やはり鍵は運動量?」ZEROさんの分析より

サッカーファンの間では、W杯で盛り上がった一般人を、何とかJリーグファンへと引き込めないかという議論が盛り上がっているようですが、申し訳ないですが私自身はしばし自転車に浮気する不謹慎で行かせてもらいます(笑)。
つー事で、戦評はしばらく休みがちにはなりますが、いただいたメールには何とかお応えするようにします。とは言え、今回メールをいただいたZEROさんには、準決勝の後でも詳細な意見をいただいたのですが、そっちはほったらかしになったままですいません・・・

ガゼッタ様の戦評をヒントに、FIFAのスタッツを使って少し分析らしいことをしてみました。
結論的に言うと、ガゼッタ様が仰るように、オシムの先進性、ハードワークの大切さが分かるデータでした。
私のシロウトの分析は以下です。
☆スペインと日本
http://www.fifa.com/worldcup/statistics/teams/distance.html
http://www.fifa.com/worldcup/statistics/teams/passes.html
http://www.fifa.com/worldcup/statistics/teams/passelength.html
ここの三つのデータがあります。
優勝したスペインの走行距離は105km/90min、一方日本は107km/90min。日本はスペインを上回っています。日本は総合の走行距離で10傑入りしていて、賞賛に値します。
一方で、優勝したスペインのパス成功率は80%、一方日本は60%。特にミドルパスの成功率はスペイン84%に対し、日本は65%です。
ここから、体格は確かに似ているかもしれないが、テクニックにおいて大きな差があることが認められます。さらに、これだけミドルパスが成功しないと最終ラインやボランチからの大きな展開は期待できません。
つまり、一端引かれてしまえば打開する策が乏しい状態は変わっていません。従って、「このスペインですら」60年ぶりにベスト4なのだから、今日解説をしていた山本氏、早野氏の指摘したとおり、2倍速くらいで追いついていこうとしていかないと、ベスト4への道のりはかなり苦しいのかな、と思われます。
☆今大会から見える傾向
ここに面白いデータがあります
アルゼンチンの一試合平均の走行距離はわずか98km/90minです。スペインはおろか、ブラジルよりも少ないものです。攻守にわたって運動量が他のチームに及ばなかったことが推測されます。
http://www.fifa.com/live/competitions/worldcup/matchday=21/day=1/match=300061505/index.html
http://www.fifa.com/live/competitions/worldcup/matchday=21/day=1/match=300061505/index.html
スペイン、アルゼンチンがドイツが戦った準決勝と準々決勝をサンプルとして比べます。ドイツは一試合平均で108km/90minで、かつ走行距離10傑の中では2位だから攻守にわたってハードワークをしていたことはほぼ間違いないと言えます。
そうしたチームを比較の基準にすることで、一つの面白い傾向が読めます。
オフェンスで最後の仕事をするのは、
スペイン:イニエスタ
ドイツ:エジル
アルゼンチン:メッシ
なのは周知の事実。
三人の走行距離は
イニエスタ:10.7km/90min。
エジル:11km/90min。
メッシ:8.5km/90min。
三人のパス成功率は
イニエスタ:73%
エジル:71%
メッシ:72%
となります。エジルとメッシを比べるのはいささか気の毒ですが、3チームの核となる選手の大きな違いはメッシの運動量の少なさです。
彼は、どうもマラドーナの指示で自由を与えられ、あまり守備のタスクをしていなかったらしいですが、他の二人はしっかり守備もやりながら、最後の仕事をしています。
ということは、どれほど個として優れていようと、チームとして勝っていくには、そうした選手でもハードワーク(攻守にわたって動く)が必要だし、やって当たり前(解説の二人も強調していた)だということが言えます。シャビなんて、決勝は両チーム1位の15km/90minを走っていますし。
ということは、オフェンスだけすれば良い、ディフェンスだけすれば良い、そういう選手は、あるいはそういうサッカーをするチームはタイトルを掴むことは出来ない、酷い言い方をすれば掴むに値しないということかもしれません。
その点、スペインでハードワークへの理解がなかった俊輔には残念に思いましたし、どうも嫌いのような雰囲気を出している本田には私は心配になっています。
以上が分析になります。サッカー玄人のガゼッタ様には参考にならないかもしれませんが、お読みいただければ幸いです。

今回かなり意外だったのは、バルサでは誰よりも走っているメッシがほとんど走らず、逆にクラブでは真面目に走ってなかった本田が、チーム内運動量で全て上位に入っていた事ですよね。
メッシは守備放棄というよりは不調の影響が大きかったのかもしれませんが、本田が良く走っていたのは驚きしかありませんでした。つーか、実は今までクラブで手を抜いていたのかと(笑)。中村は走っているんだけど、タックルやゴール前への飛び込みというクリティカルなプレイを避ける傾向が高いので、ハードワークしているように見えなかったのでしょうね。
全員守備、全員攻撃でないと勝てないというのは、欧州リーグではもう当然の事実になっていましたが、今回のW杯は冬季開催という事で、冬季主体の欧州リーグでの常識がそのままW杯にシフトされたという部分があったと思います。
次の開催地はブラジルでまたも冬季開催ですが、ハードワーク路線で失敗したドゥンガの後を受けて、絶対優勝が義務付けられているブラジルがどんなサッカーをして来るのか本当に楽しみですよね。