「失うものは何も無いが、得たものも何も無い」キリンチャレンジカップ 日本-韓国(0-2)

1対1で勝負する意識、フィジカルの強さ、寄せの早さ、当たりの厳しさ、攻守の切り替え、戦術の浸透度、コンディション、およそ全ての項目について韓国に完敗だったね。もっとも、韓国もパクチソンは別格としてもそれ以外の選手の出来は決して良くなかったんだけど。
もともと、チビッ子サッカーでとりあえずは小さくチマチマとまとまっていた日本が、韓国とセルビアに大敗していきなり「個の力だ!」と本田や稲本、森本を呼んでみたのはいいけれど、彼らのサッカー観とそれまでのチーム作りに明らかな齟齬が生じ、おまけにチビッ子サッカーの根幹を担っていた遠藤と中村のコンディションが最悪で、もはやチームとしての統一性も何もあったものではないバラバラサッカーになってしまいました、といったところだろう。
日本が、もともと世界に比べれば個の能力が低いから、「岡田監督のコンセプトは間違ってない、そういう奇策で対抗しなければ、日本は勝てない」としたり顔で語る人がいたりするんだけど、全世界で繰り広げられているサッカーの試合で、弱いチームが強いチームに勝つアップセットというのは、だいたいパターンが同じなんだよね。それは、1対1の力で劣っても気持ちと集中力だけは負けないように体を張って相手を止め、全員が統一された意識の元で一丸となって戦い、技術では負けても攻守の切り替えの速さと運動量で相手を上回るサッカーを見せるかどうか、という事であって、奇抜で「世界を驚かせるようなサッカー」でも何でもない。だいたい、そんなもので強敵に勝てるなら、もうとっくにどこかのチームがやってるってば(苦笑)。
しかし良く考えてみれば、1対1での対処については、自分の体を選手にぶつけてまでトルシエが熱心に指導した事だし、統一された意識と切り替え、運動量については誰が口酸っぱく言って来た事かは言わずもがな。そういう基本の基本部分を忘れて、接近展開なんちゃらとか、オレ流とか、一人称しか出てこないサッカー理論で世界4位になろうとは、おこがましいにも程がある。残念だけど、12年前に日本人の全員が狂乱、夢想していた最中に、たった一人で必死に現実と向き合い、世界に対する策を考えていた、あの時の岡田さんとは人間が変わってしまったね。
今後の具体的な対処法としては、ぶっちゃけ皆無に等しいんだけど、一つは原点回帰してチビッ子サッカーで玉砕してみる事。玉砕は何をやっても同じかもしれないけど、もともとのコンセプトで負けたら少なくともそのコンセプトがどう間違っていたのかが分かるし、今後誰かが同じコンセプトを持つ危険性も無くなる(笑)。そしてもう一つは、森本、本田、稲本、闘莉王といったフィジカルの高い面子をセンターに置いて、大久保や松井といったサイドで勝負できる人材を配置、戦術は最低限の約束事だけを決めてコンビネーション作りだけに集中させる事。そうすれば、何かのはずみや相手のミスといった幸運で点が取れるかもしれない。どっちにしても3敗はするだろうけど(笑)。
さて、この状態でイングランド戦はどうチームを持って来るのか、ある意味楽しみになって来ちゃったよなあ(苦笑)。