先週のツールドフランス

注目のタイムトライアルはウルリッヒが転倒もあってアームストロングを突き放す事が出来ず、結局アームストロングがツール5連覇と言う偉業を見事達成した結果となりました。これで彼もツール最多勝者のアンクティル、メルクス、イノー、インデュラインに並ぶ「ル・サンク・クラブ」の一員となる事が出来たわけです。
今回のアームストロングを見て思ったのは、体調不良や落車したり巻き込まれたりという危機を奇跡的に回避し、チームタイムトライアルの勝利に代表されるようにアシスト陣に助けられるといったような、彼だけの力だけではなく、神様や仲間の力もあって苦しんでようやくつかんだ勝利だったと言う事ですね。
今までの連覇中は、彼が非ヨーロッパ人である事やしばしば傲慢な言動を見せた事もあるのですが、戦い方自体が序盤の山岳でアシスト関係無しに一気にアタックし、ライバル達の戦意を早々に喪失させるといったような、自分の強さだけを誇示するレースをして来たことが彼に対する地元メディアの反感を買っていたように思います。
しかし今回は、チームとしての働きや神の手の存在といった自転車レースの本当の厳しさ、醍醐味といったものを尊重した戦いをアームストロングがせざるを得ない状況になった事で、主催者側はもちろんツールの地元であるフランス人の人達にとっても、ある意味アームストロングが「我らのツールにひれ伏した」という自尊心が満たされて彼を祝福する気持ちが高くなった一面もあるように思えます。
サッカーの場合においても、特に近年日本から欧州に移籍する難しさについていろいろ論じられたりする事が多いですが、ただ語学を習得して良いプレイをするだけではなく、彼らが培ってきた歴史やルールといったものを尊重した行動を取らなければ正当な評価を得られないと言う点で、両方同じ事が言えるのではないでしょうか。
もちろん来年は、アクシデントさえ無ければアームストロングが前人未到のツール6勝に挑む事になるでしょうが、今年最大のライバルであるウルリッヒが復活の兆しを見せ、ヴィノクロフの急成長やベローキのリベンジも期待され、今年以上にアームストロングにとっては困難な、見ているほうにとってはスリリングな展開が予想されます。過去の英雄を凌駕される事態に陥った時のフランスの反応と言う意地悪な見方と共に(笑)、また来年の夏を楽しみに待ちたいと思います。