「48戦無敗のユーベを破る」イタリア・セリエA第11節 ユベントス-インテル

前期を圧倒的な力で制した王者であり、今期もスクデット争いを快走しているユベントスとのイタリアダービーは、インテルがアウェイでありながらユベントスを3-1で下し、48連勝の記録をストップさせると同時に首位ユーベに勝ち点1差まで詰め寄る極めて大きな勝利となった。
しかし快挙に沸き立つ世間の反応を見ながら改めて試合を見てみると、インテルにとっては非常に際どい、まさに紙一重で勝利を手繰り寄せた試合内容だった事が分かる。
まずインテルにとって誤算だったのは、開始わずか20秒でまたもオフサイド見逃しによる先制点を決められてしまった事。その失点の後も、ピルロのパスに反応して2列目から飛び込んで来るマルキージオらの攻撃をインテルは止めることが出来ず、GKハンダノビッチが至近距離からのボレーをセーブして事なきを得たものの、ここで2点目が入っていれば勝利はかなり厳しいものになった事は間違いない。
インテルはカッサーノ、ミリート、パラシオを前線に並べた3-4-3の布陣を取って来たのだが、試合前の懸念通りに前線の3枚のところでプレスがかからず、序盤はピルロをフリーにしてしまって大ピンチの連続になってしまったのだが、ここからパラシオがピルロを常にマークする、3-4-1-2に近い形にシフトしてから、ようやくインテルの試合が安定した。
パラシオのポジションチェンジに加え、インテルにとってターニングポイントとなったのは、長友の対面であるリヒトシュタイナーがイエローをもらった後に、2枚目をもらってもおかしくないファールを犯し、39分に下げられてしまった事。それまでは、運動量で丁々発止のやり取りを長友と繰り広げていたのだが、ユーベ全体が前半の終わり頃から下がり気味になったせいもあるのか、代わりで出たカセレスはほとんど前に出る事がなく、長友が常時高い位置で攻撃に絡めるようになった。
ユベントスは怪我のヴチニッチに代えて後半からベントナーを投入したが、これで前線からのプレスが落ちると同時にベントナーはポストプレイでも役に立たず、結果的に交代枠2つを無駄に消費してしまったのもユベントスにとっては痛恨だった。
あとは、長友が左サイドをいつものように制圧し、前半はアサモアに苦しんだサネッティも後半からは落ち着いた対応を見せてサイドの攻防を優位に持ち込むと、長友が受けたファールによるFKからPKをゲットして同点に追いつくと、カッサーノに代えてグアリンを投入するストラマッチョーニ監督の采配も当たり、グアリンの地をはうようなミドルをブッフォンが弾いたボールをミリートが蹴りこんで逆転。
その後はクアッリャレッラの切れにインテルは冷や汗をかかされる場面はあったものの、後半ロスタイムのカウンターからグアリンが長いトラバースパスを長友に通し、シュートは相手に防がれたものの再びボールを拾ってパラシオにスルーパス、これをパラシオがブッフォンに当てながら決めて勝負有り。
色々な勝敗を分けるポイントがあった試合だとは思うが、個人的に最も大きかったと思うのは、前節に長友とカンビアッソを温存した事だろう。ユーベが途中から疲れを見せ始めたのに対し、インテルは中盤と長友の勢いが最後まで衰えず、それが後半の内容と結果につながった。選手交代もズバリと当たり、ストラマッチョーニの株は上がりっぱなしだが、このまま調子を上げ続けていけるのか。
中盤の選手層は充実して来たが、ミリートとカンビアッソ、サネッティ、サムエルらベテランの代わりがいない事を考慮した冬の補強に加え、スナイデルが復帰した後にどういう方向性にして行くのかが、今後のポイントになって来そうだ。
長友については、ユーベの先制点ではオフサイドを確認したためにスライディングが遅れ、前半終了間際のフアンとの連携ミスで決定的なピンチを作ったが、3-4-3での懸念だったビルドアップもそこそここなしていたし、着実に成長しているのは確か。ストラマッチョーニ体制でレギュラーはこのまま確実だろうから、是非スクデットを取ってハクを加えてもらいたいね。