「ここから乾の正念場」ドイツ・ブンデスリーガ第9節 シュツットガルト-フランクフルト

日本人選手では、フランクフルトの乾とシュツットガルトの酒井の2名が先発に名を連ねた対戦だったが、チームの勝敗も彼らの出来も対照的な結果になった試合だった。
リーグ開幕以来、どんどんと選手が前に出て来る超攻撃的な姿勢で結果を出して来たフランクフルトだったが、この試合ではアウェイということもあってかシュツットガルトの勢いに序盤から押され、前半は本来のサッカーを全くさせてもらえなかった。
特に乾のプレイにおいては劣勢に立たされた影響が顕著で、乾は基本的に足元でボールをもらえうポジションで待つ選手なので、中盤を抑えられると彼にはほとんどボールが回って来なくなり、仕方なく後方に下がってボールを受けるのだが、そこから高い位置までボールを運ぶのにドリブルしか選択できず、酒井の早いチェックもあってボールを持ってもロストする場面が頻発した。
それ以外でも、乾は攻守に走ってはいるのだけど局面でのメリハリが無くて、結局味方からボールを引き出すことが出来ずに無駄走りになってしまう事が多く、どうも心身両面での疲れが見えているようで心配である。後半から、フランクフルトは乾に代えてマトムールを投入したが、彼は積極的にサイドへ流れてボールを受ける事でリズムを作り出していただけに、余計に乾の出来が目立ってしまった。
Bildの記事では、乾の守備が物足りないから二軍落ち、という監督の談話が載っていたそうだが、それは扇情的な記事だとしても、不調の選手が守備から立て直すというのは良い手段であるのは事実である。1対1の守備でボールを奪えば当然ながら前にはスペースが出来るわけで、それが自然に攻守におけるメリハリにつながる。
この試合では、80分から岡崎が途中出場したが、まさに彼のプレイがその良いお手本で、守備から攻撃へと素早く切り替え、攻撃が途絶えてもさらにGKなど相手ボールへのチェックを続ける岡崎の絶え間ない動きが、そこまでプレスが落ちて試合の流れがフランクフルトのものになってしまっていた状態を、再びシュツットガルトに戻す原動力になっていた。
それはこの試合での酒井のプレイにも言え、確かに1対1の対応やポジショニングについてはミスが多いんだけど、味方がボールを持ったら常に前へと進む勢いがあるので、自然と彼のサイドにボールが集まって来るし、彼なら迷い無く前に出るだろうという信頼があるので、酒井の上がったスペースを誰かが埋める流れが出来上がっている。そしてその流動性が連鎖することで、チームの勢いが作り出される。
日本人の性質なのか変な忠実さを見せて攻守にダラダラと走り回ることで、そのサイドにおける攻防が死んでしまい、結果的にチーム全体の流れが悪くなるというパターンは、中田や中村の悪い時に良く見た光景だが、この試合の乾を見てそれを久々に思い出した。乾には、是非シュツットガルトでの酒井や岡崎のプレイを見て、次のチャンスに生かしてもらいたいところだ。