「賭けに勝った佐々木監督」ロンドン五輪女子 準々決勝 日本-ブラジル

世界中からの批判が集まる事を覚悟してまでグループ2位狙いをしてブラジル戦の勝利にかけて来た佐々木監督だったが、まさにその背水の陣と言うべき大きな賭けに勝利する見事な結果を出してみせた。
おそらく、監督がわざわざ言う必要の無い発言をしたのは、選手に対して質問が集まる事を避けるために自分が盾になるという思いがあったはずで、その監督を負け犬にさせないためにとおそらく選手も奮起したのだろう。そこまで計算してのパフォーマンスだったとしたら、これは素晴らしいを通り越したマネージメント能力である。
この試合における最大のポイントを挙げるとすれば、それは両チームの守備における意識の差、という事になるだろう。
前半のブラジルは、3トップを日本のDFラインと中盤の間にポジショニングさせており、単純なフィジカル能力で勝てない日本は、常に3人を視界に入れたままで数的優位を保つ守備陣形を強いられるために、SBとSHが低い位置に貼り付けられて2トップが孤立させられていた。澤もマルタのマークに忙殺されており、宮間は相変わらずプレイが安定せず、序盤はこれどうやって点を取るんだ状態であった。
ところが、日本は20分頃からいきなりチャンスを量産し始め、27分に澤の早いタイミングでのリスタートから大儀見が抜け出し、冷静にファーへ流し込んで日本が先制してしまう。
その要因となったのもブラジルの守備。日本は、CBのどちらかが中盤でアタックすると、阪口やSBがすぐさまラインに入ってカバーするのだが、ブラジルはとにかく1対1で当たってどうにかするだけで、カバーリングの組織が全く無いも同然であった。先制の場面も、ブラジルの左サイドが完全に大儀見のマークを外しており、CBも1対1を破られた場合の警戒を全くしていなかった事が良く分かる。
後半からブラジルは、前半は日本の人海守備であまりボールが触れなかったマルタを中盤に下げて2トップにして来て、前半ほどパスは回せなくなったものの、今度はボールキープからのドリブルを中心に日本を崩しにかかって来た。
しかし日本も、福元の好セーブと岩清水・熊谷のCBコンビの粘り強い守備で何とかブラジルのゴリ押しを凌ぎきると、73分に大儀見のファンタジックなパスから大野が抜け出し、冷静に浮かしたシュートをブラジルゴールに決めてみせた。このシーンも、大儀見との1対1で遅れを取った後のブラジルの対処が非常にお粗末だった。
さて、次の相手は親善試合でこてんぱんにやられたフランス。フランスはブラジルよりも守備組織はしっかりしているし、個人のスピードという点ではブラジルよりも上で、単純に1対1で対処する守備をしていたら同じようにやられてしまう。
おそらく、日本の戦い方はブラジル戦と同じようにリトリート主体でDF裏のスペースを警戒し、ポゼッションよりもカウンターを狙ったサッカーをせざるを得ないだろうが、それが今度はどういう結果になるか。これまでのように、澤や宮間が攻撃にあまり絡めないようだと相当厳しくなる。次こそコンディションのピークを合わせて、相手に走り勝つサッカーを見せてもらいたい。