ツール・ド・フランス第8・第9ステージ

第8ステージは、ジュラ山脈を縫うように多数の峠を駆け抜けるコースで、頂上ゴールでは無いものの途中の峠で遅れると一気にメイン集団とのタイム差がついてしまうために、例年厳しいサバイバル争いが繰り広げられるのですが、今回もはっきりとそれが浮き彫りになってしまいました。
北京五輪チャンピオンのサムエル・サンチェスが落車で鎖骨骨折リタイアになったのを始め、それに巻き込まれたバルベルデ、他イヴァン・バッソやタラマエ、マイケル・ロジャースといったグランツールの常連があえなく脱落、個人総合はかろうじて5位までが首位ウィギンスから1分差以内という、序盤から既に総合争いの趨勢が決まりつつ有る状態になってしまいました。
そして第9ステージの個人タイムトライアルではそれがさらに大きく広がり、首位のウィギンスがカンチェラーラに1分近い差をつける圧倒的な強さでステージ優勝、2位も同じくチームスカイのフルームが入り、優勝候補筆頭だったディフェンディング・チャンピオンであるエヴァンスが何とウィギンスから1分43秒差の6位になってしまい、総合では1位ウィギンスと2位エヴァンスの差が1分53秒という大差になってしまいました。
エヴァンス自身は、カンチェラーラと1分以内の差は良くも無いけど悪くも無い、ただチームスカイが強すぎたと語ってますが、やはり明らかに本調子ではありませんでしたね。サッカーでもそうですが、相手チームがPKまで120分戦ってしかも日程が有利な対戦だったりするほど、案外先に自分たちの足が止まってしまったりするもので、下手にペース配分を考えたり慎重な入り方をするとかえって変な壁が出来てしまうのは良くある話で、エヴァンスもその罠にハマったのかもしれません。
ただ、ウィギンスはまだツールのような長期間のレースで山岳を高いレベルで走りぬく経験は多くなく、どこかで大ブレーキを起こしてしまう可能性はゼロではないわけで、もし山岳でそれが起こると簡単に5分程度の差はついてしまうわけで、まだまだ勝負がついたとは言えません。
まだ総合で食らいついているフランク・シュレクやスベルディアといったレディオシャック組と共闘して、何とかフルームのアシストを切り崩してウィギンスを裸にすれば、エヴァンスにもチャンスがあると思います。休み明けの第10ステージに待ち構える超級グラン・コロンビエ峠での果敢なアタックを期待したいですね。