「ヴェルディとは異母兄弟のようなギラヴァンツ」J2第15節 ギラヴァンツ北九州-東京ヴェルディ1969

結果だけを見れば、ギラヴァンツはホームで1-5の惨敗と見るべきところが何もないような結果ではあるが、個人的には三浦泰年監督のチーム作りにとても興味を持たせる試合だった。
ギラヴァンツは、とにかくGKから徹底して自陣ではボールをつなぎ、敵陣の中に入ると個人がどんどん単独で勝負に出ていくという、従来の日本人チームのサッカーにはなかなか見る事ができない、大陸的な直線的スタイルの攻撃を繰り出して来る。中でも、高卒ルーキーながら既に5得点をマークしている渡大生で、ちょっとかつての久保を思わせるようなダイナミックなプレイと思い切りの良いシュートが目を引く、本格派のストライカーである。
しかし、個人でのドリブルやミドルシュートは良くても選手の判断にミスが多く、何でもない場面で簡単に敵へとパスをしてしまったり、味方がフリーで並走しているのに無理やりドリブルを仕掛けて取られたりと、まだ勢いだけでサッカーをやっているような感じで、3-0になってから1点を返してこれからという時に、あっさり守備のミスで失点してしまうなど、試合運びという点ではまだまだ成長の余地があるなと思った。
ヴェルディのほうはギラヴァンツに比べるともっと徹底的にパスをつなぐサッカーで、しかしチーム全体の流れに無理がなく、足裏を使った反転やアウトサイドのパスなど、細かくボールタッチをしながらも個人が前に推進力を持ち、ドリブルをしている間に味方がパスコースを作って確実につなぐスペインスタイルが浸透しており、ギラヴァンツの守備が連動せずにプレスのタイミングがバラバラだったのもあって、1つマークの裏を取れれば一気にゴール前へとボールを運び切る効率の良さを見せていた。
3-1になってから中盤にスペースが出来てギラヴァンツに攻め込まれる時間帯を作られたが、粘り強く自陣でボールを絡み取る守備をしつつ、巻を投入して前線からのプレスで自陣でボールをつなぐギラヴァンツのミスを誘い、得点を積み重ねるというチームとしての成熟度の差を見せつけることになった。
今回は大敗になったとは言え、ギラヴァンツのサッカーはJ2メソッドの組織的に守ってカウンターという定石とはかけ離れているスタイルで、地元にしてみたら結果につながりにくいサッカーでストレスがあるかもしれないが、第三者からすると見ていて楽しい。この試合では出場していなかったが、今年強化指定選手になった福岡大の中原というイキの良いプレイメーカーもいるらしいし、これから注目すべきチームではないかと思う。