「FC東京は日本のドルトムントを目指す?」ACLグループF FC東京-蔚山現代

後半35分までFC東京が蔚山を無失点に抑え、途中で2度もリードを奪いながらも単純なロングボール、それも1失点目は森重が完全にオフサイドの連携を忘れるというボーンヘッドにやられてドローに終わるという、展開的には非常にもったいない結果になってしまった。
が、ポポビッチ監督が目指すサッカーが、Kリーグの強豪である蔚山に対してある程度通用したという部分においては、前向きな気持ちを持って良い試合だったとも言える。とは言え、前半の東京はACLで陥りがちな罠に危うく嵌るところだった。
Jリーグのチームがやられるパターンはだいたい決まっており、一番弱いのがパスの出し手に対してガッチリマークされ、ボールホルダーがパスの出しどころを探している間にプレスをかけられ、仕方なくバックパスで後ろに戻して最後にDFかGKが蹴り出したボールを拾われて二次攻撃を受けるというパターンで、前半の東京は2~3度ミスからカウンターで失点してもおかしくないピンチを作ってしまっていた。
しかし、普通ならプレスがきついからロングボール、というU-23のシリア戦のような自滅パターンに行ってしまわないのがポポビッチサッカーの良い所で、たとえミスが出てもDFラインを下げること無く、スペースと時間の無いバイタルエリアへと果敢に攻め込む姿勢が、本人的にはクロスだったとは思うが徳永の先制ループシュートにつながったと言える。
ただ、そこから蔚山がより攻撃に比重をかけるようになって、東京の前線に対してのプレスが弱まって梶山や谷澤が高い位置でボールに絡めるようになった時間帯に、チャンスを作りながらも追加点を奪えなかった事が最後に響いてしまった。
ポポビッチ監督が目指すプレッシングとパスサッカーの両立という方向性は、あの香川がいるドルトムントと非常に方向性が似通っていると思うのだが、それだけに現在の東京がレベルを上げて行かないといけない部分ははっきりしているように思う。
まず1つは、強力な1トップの選手・・・は日本人にはなかなか難しいので、トップ下での香川のようにバイタルエリアでボールを受けて前を向き、サイドが上がる時間を作れる選手。その役割が期待されるのは梶山ではあるが、例年になく好調とは言えまだ反転力やトラップの精密性に欠けるので、彼にはもっともっと期待したいところである。
そしてもう1つは、DFラインから前線へのビルドアップ。その面では東京にとって今野がいなくなったのが痛いが、その分森重がしっかりやらないといけないはず。この試合でのミスで監督から名指しで批判されたが、それだけ彼に期待されている部分が大きいからであろう。
ACLで結果を出しているJリーグ勢は、ポゼッション重視のパスサッカーか、守って外人のカウンターに頼ったチームしか無いので、是非ともFC東京のようなプレッシングサッカーで勝ち上がるチームが出てきて欲しいところなんだけどねえ。