「槙野劇場の裏側」キリンチャレンジカップ 日本-アイスランド

1得点1アシストに加え、2点目も左サイドでの守備が起点になり、最後はPKまで与えるという全得点に絡む(笑)大活躍を見せた槙野&ハンドスプリングスローにどうしてもスポットライトが当たる試合ではあったが、その裏にあるウズベキスタン戦を見据えたザックのしたたかさこそ、注目すべき点だったのではないかと思う。
通常、こういう守りを固めてくる相手に対しては、前線にクサビを入れてから中盤が前を向いてボールをもらい、そこからサイドに展開したり2列目からの飛び出しに合わせるパターンが常道なのだが、今日の日本はそういう攻撃をほとんどやっていなかった。
その代わり、まずDFがボランチにボールを預け、当然アイスランドはそこにプレスをかけて来るわけだが、そこにもう1人のボランチや2列目がフォローしつつ素早いパス交換でプレスをいなし、シンプルにサイドへとつないでそこにもプレスがかかると、今度は後ろがフォローして縦のパス交換でSBの裏を狙うといったように、プレスを誘きだして出来たスペースを使う狙いが徹底されていた。
これは明らかに、同じようなサッカーでカウンターを狙って来るウズベキスタンを想定した対策であり、前線でキープできる本田がいない以上、クサビのパスに頼り過ぎないスタイルを浸透させる事は非常に合理的であり、それがチームとしてしっかり具現化出来ていたのは、相手とピッチに合わせ過ぎて自分達を見失ったサッカーを最近見てしまっていただけに、何とも心強い気分にさせられた。
まあ、前半で代えられてしまった柏木や大久保、そしてベテラン復活で注目を浴びた石川がいまいちな出来だったのは確かだが、この日活躍していた藤本もザックジャパンの最初では散々だっただけに、まだこの1試合の出来でどうこう言うべきでは無いだろう。
大久保と柏木については、特に前半は槙野の位置取りが極めて高かったので、かえって彼らのポジションが窮屈になってどう動けばいいか迷っていた部分はあったように思う。その点、中村憲はさすがで、味方と相手のポジションバランスを見ながら空いたスペースに入り込みつつ、素早いターンと判断で前への推進力を生んでいた。
そしてその高すぎた槙野のポジションだが、とにかく1対1が重要でカバーを考えないドイツサッカーの影響がはっきり見えてとても面白かったね。ザックジャパンで3-4-3をやると、両サイドがどうしても守備のカバーを気にしてSBの位置まで下がってしまう事が機能しない原因になっているのだが、案外槙野がサイドをやると上手く行くかもしれないなと思ってしまった。今期から浦和に戻って来てしまったけど、是非ともJに再び交わること無く、ドイツスタイルを貫いて欲しいところだね。