「走らない選手が作る走るチーム」J2第34節 サガン鳥栖-横浜FC

秋口にHDRを買い換えたのはいいけれど、外部入力が1箇所だけでスカパーしかつなげられず、JSPORTS1が見られるケーブルチューナーの録画ができなくなったために、JについてはBSでの中継試合しか見られなくなり、今回ようやく無料開放デーでJ2の試合を見る事ができた。
鳥栖は、かつて西澤や森島を後ろから操縦していた名選手であるユン・ジョンファンが率いるチームであり、J2初年度から参加していたクラブの中で、未だJ1に上がった事がない最後のクラブという事もあり、ホームのベストアメニティスタジアムは大変に盛り上がっているそうで、試合を見るのが楽しみだった。
あのテクニシャンが指導するのだから、バルサのようなパスサッカーをやっているのかと思ったらさにあらず、徹底的な前方プレスからサイドやDF裏のスペースに人を走らせる、超ハードワークなスタイルだったのに驚いてしまった。横浜Fマリノスの木村和司監督もそうだけど、現役時代に走らない選手だった人ほど、監督になるとハードワークチームを作りがちなのは、親が果たせなかった夢を子供に託すようなものなのだろうか(笑)。
4-4-2の前方プレスチームの場合、いったんプレスの第一波を掻い潜られてしまうと、あっさりバイタルやDFの裏を取られるピンチを作ってしまいがちになるのだが、守備陣のポストプレイに対する厳しい当たりが徹底されていて、ファールの数が増えはしたものの、前線の選手がフリーな状態で前を向けるようなチャンスメイクを許さなかった。
そして運動量が落ちる後半になると、全体のゾーンを下げて2トップが中盤の守備に参加する4-4-1-1の形に変化し、バイタルと裏のケアに重きを置く戦術に切り替えるあたり、単純に自分たちのサッカーを押し通すだけではない柔軟さを兼ね備えている事を証明したと言える。
逆に横浜FCは、個の能力での突破やセットプレイで単発のチャンスは作ったのだが、それぞれが描いている攻撃のビジョンに統一性が見られず、良い時間帯が長続きせずに後半は完全に沈黙してしまい、0-2になってイライラが募ったのか高地が故意に取られる肘打ちで一発退場してしまったのは、ベテランが多いチームとしては情けない限りである。
おそらく、この内容であればプレッシャーにさえ負けなければ、鳥栖がJ1へと昇格できる可能性は非常に高いと言えるが、19得点のエース豊田はサンガからのレンタルだし、セットプレイの精度がJ2とは段違いなので、プロフェッショナルファールに頼る守備では無失点に終えられる試合はそうそう多くならないだろう。若きユン・ジョンファン監督の手腕が問われる1年になる事は間違いない。