松田直樹選手追悼試合

久々に、びりけんさん(名前は無かったですが、そうですよね?)から、松田選手追悼試合となった松本山雅対佐川のレポートをいただきました。
私ごときが、この試合について何かコメントを残せる筋合いは無いので、今回は紹介だけに留めたいと思います。ありがとうございました。

行きの車中涙雨と形容するしかない降りにたたられたことや。
スタジアムに続く人の列が皆花を持って黙々と歩く姿が葬列のようであったことや。
近くの空港から緑色の飛行機が飛び立って厚い雲の中に消えて行ったことや。
こんな重苦しい、譬えようのない気分でサッカーを見に行ったことはこの人生の中で一度もありませんでした。
慣れない海外生活、寝る時間を確保するのがやっとの激務でサッカーから遠ざかる日々の中、本当に楽しみにしていたというか、この試合のために一時帰国したようなものだったのに。
「あの男」と「あのチーム」との落差があまりに激しく、それを肉眼で確認するための試合だったはずなのに。
たらは魚屋、ればは肉屋なんて普段から言ってる自分でも、考えてしまうのです。
日本サッカーの一時代を築いた男が、Jですらないクラブチームに来る必要があったのかなんて。
サッカーではなくマリノスを選んでスタッフに転身していたら、あるいは他のチームに移籍していれば。
しかし、現実はこうです。
献花台には無数の花が添えられ、彼が短い期間で残した功績をしのぶには十分でした。
やんちゃなサッカー小僧のイメージが強い彼でしたが、松本に来てからの彼に接した者の話では大人だった、少なくとも大人になろうとはしていたということです。
どこか、無理をしていたのかもしれません。
試合前にセレモニーがあり、一段と膨れ上がったゴール裏が彼のチャントを歌った時、二つの実感が生まれました。
このチームに松田直樹選手が確かにいたこと、そしてその雄姿をこの目で見る機会は永久になくなってしまったこと。
追悼試合。壮行試合とも引退試合とも別の重苦しい空気がそこにありました。
目当ての選手はいない、かといって来ないわけにはいかない、そんな観客でアルウィンは埋め尽くされていました。
試合開始15分前、雷を伴った豪雨が降りだし、試合開始は一時間も延期。過去こんなことに見舞われたことがなく、僕らは「来てるんだな」と笑いあいました。涙雨などではない、叱咤激励の雷雨です。
退場者二人を出しての敗戦、と書けばこの上なく無様ですが、憔悴しきった中、気持ちだけが空回りし、ホイッスルの瞬間緑のユニフォーム全員がその場に倒れたのを見れば責められる者はないと思います。
この試合だけを見れば、この一週間に彼らに起こったことを差し引いてもJ2昇格は相当難しいでしょう。
立ち止まってるひまはないと言いながら、戦術的にも精神的にも背番号3の不在を色濃く引きずっているのだから。
とはいえ、JFLはまだ半分来たところです。片肺となった松本山雅が今後どうなっていくのか。このチームを選んでくれた松田選手に報いる戦いを見せてほしいとは思います。
この試合には多くの報道陣、著名なライターの方も訪れており、自分なんかが何を書いても意味があるのかとは思いましたが、この試合に来たくても来られたかった方が故人を偲ぶ一助になればと思いメールしました。
改めて、松田選手のご冥福をお祈りいたします。