「2つの顔を持つしたたかな仙台」J1第14節 ヴィッセル神戸-ベガルタ仙台(1-1)

直接被災を受けた地域のクラブということで、震災後の成績に相当悲観的な見方をされたベガルタだが、蓋を開けてみればここまで無敗で3位につける快進撃。この試合でも、復興にかけるモチベーションの高さをひしひしと感じさせる内容を見せつけた。
仙台のサッカーを一言で表すと、ズバリ「全員守備&全員攻撃」。守備時にはコンパクトな4-4のゾーンを上げ下げしながら相手のクサビに対して激しくプレッシャーをかけ、ボールを奪うと梁勇基や関口を中心に相手DFラインの裏へと果敢に飛び出し、前線に基点を作ると後ろからどんどんスペースへと入り込んでゴールへと向かっていく。
神戸もサッカーの方向性は同じではあるのだが、守備から攻撃への切り替えと、前線に飛び出した選手と後ろから攻撃参加する選手の意思疎通で仙台が上回り、攻撃の実効性という面ではかなりの差があったと言える。
仙台は21分に松下からのピンポイントクロスを赤嶺がうまくゴールに流しこんで先制し、そのまま終始押し気味で前半を終了すると、後半は全く別の顔を見せ始める。
今度は4-4のゾーンが自陣の低い位置に敷かれ、前線も飛び出しよりはゾーンに近い位置でクサビのパスを受ける事に切り替えられ、今度はボールを奪ったら縦方向への素早いパス交換を行って神戸のプレスをいったん凌ぎ、そこから攻撃を仕掛けるという、まるでガンバのようなサッカーをやってしまうのだ。
神戸は後半からボッティとボボを投入し、ブラジル人を並べて個人技で勝負をかけて来るが、逆に守備への対応が薄くなって何度も仙台にカウンターを食らい、徳重がナイスセーブを連発してなかったらそこであっさりと勝負が決まってしまったところだった。
80分を過ぎると、さすがに仙台にも疲れが見え始め、それでも何とか神戸のクロス攻撃を跳ね返し続けていたのだが、とうとう89分にサイドチェンジを受けた茂木が、ロッベンばりに中へと切れこむドリブルで仙台のDFを置き去りにし、見事な同点ゴールを突き刺しドローで試合は終了した。
仙台はただがむしゃらに走っているだけかと思ったら、全員が一斉にゲームプランの変更に付いて来るなど、戦術意識の徹底ぶりが見事で、これから夏場になってスタミナが落ちるとどうかという不安はあるが、この成績はフロックでないことを見せつけていた。
それに対し、終盤のビハインドで妙なパワープレイに走らず、徹底的にサイドから攻撃を浴びせた神戸もしたたかさを見せる戦いぶりで、こちらも5位という順位に恥じない内容を見せていたように思う。キープ力と展開力を合わせ持つホジェリーニョのフィット次第では、まだまだ伸び代がありそうでこちらも楽しみである。