「鹿島の強さでもあり、弱さでもある」天皇杯決勝 鹿島アントラーズ-清水エスパルス(2-1)

下馬評では、FC東京を延長でようやく退けたよりもガンバを大差で下したエスパルスのほうが有利と見られていたが、内容も結果も鹿島が一枚上手の余裕を見せつける勝利となった。
鹿島の強さは、まず第一にスタメンを毎試合ほぼ固定することによる連動した攻守の動きにあり、この試合の前半はSBのオーバーラップを封印してまで清水の岡崎と藤本という代表クラスのウイングを完全に封じ込め、清水に対して与えたシュート数はわずか2本という鉄壁の守りを見せつけ、26分にはCKからフェリペ・ガブリエルがヘディングを決め、実に鹿島らしい抜け目ないサッカーを展開した。
しかし鹿島の弱さも実は同じポイントにあり、鹿島がACLでなかなか結果が出せないのは、Jではきっちりと相手を封じられる連動したプレスも、韓国のクラブのように鹿島以上のフィジカルとスピードで迫って来られると、とたんに連動性にほころびが出てそれを修正しきれないままに失点してしまうという、コンビネーションで作られてきたオートマティズムであるが故に、想定外の事態に対して意外にもろいという面がある。
この試合でも後半に清水が4-4-2にフォーメーションを変えてきた時に、2トップのケアと小野と藤本のSHへの対応がうまく行かず、16分には本田からヨンセンへと縦パスを通させてしまい、ヨンセンが技ありのシュートを決めて鹿島は同点に追いつかれてしまった。
だが、鹿島にとって幸運だったのは本山という切り札が残されていた事である。彼を相手が疲れてきた時間帯に投入する事でバイタルエリアでの攻撃が活性化し、試合のペースが一気に鹿島のほうにひっくり返ってしまう。
決勝点は野沢のFKによるものではあったが、本山投入からの流れは完全に鹿島のものであり、リードを奪ってからも全く危なげのない内容で鹿島は天皇杯をもぎ取った。
鹿島は引退が決定している大岩の花道を飾りたいという気持ちとともに、今年はリーグでの連覇が途切れてここまでタイトルが全くなかった故に、かえって勝利への渇望が高まっていたように見えた。逆に清水は長谷川監督のサバサバした笑顔に見られるように、決勝まで来たことに満足してしまっているように見えたのは邪推が過ぎるだろうか。
鹿島はこれで自力でのACL出場権ももぎ取ったわけだが、本山や小笠原ら鹿島の黄金期を支えてきたベテランがフルに働けるとは思えないし、若手のさらなる底上げと戦力補強に加え、Jリーグ番長のサッカーとメンタリティからスケールアップし、アジアでも鹿島らしい強さを見せられるようになって欲しいところである。