「FC東京のジキルとハイド」天皇杯 準決勝 鹿島-FC東京(2-1)

J2への降格が決まったしまったFC東京は、天皇杯でリベンジすべくここまで勝ち上がってきたが、結局リーグ戦と同じような課題を露呈しての敗退となってしまった。
前半の30分までは、試合のペースは完全に鹿島のもので、東京は鹿島のプレスと激しい当たりの前にロングボールを蹴るだけの攻撃になり、そのボールも平山がほとんどキープすることが出来ず、鹿島が得点を決めるのも時間の問題かと思われた。
ところが左サイドに流れた平山が股抜きのドリブルからチャンスを作ると、それにヒントを得たかのように、平山がサイドで基点を作り、そこから中盤の梶山や米本が前線へと飛び出す形で東京がいきなり優位に試合を進め始める。
そして39分に、中央をドリブルで突破した平山から左サイドへとボールが渡り、最後は中央に走りこんだ平山が見事なオーバーヘッドでシュートを放つと、ボールはバーに当たって一瞬ゴールの中に入り、最後は椋原がそれを押し込んだが結果としては平山の得点になって東京が先制点を奪う。
後半も試合のペースは東京が握ったが、15分を過ぎると徐々に東京の運動量が落ち始め、そこに鹿島が本山を投入して一気にバイタルエリアのスペースを支配するようになり、再び鹿島が盛り返し始める。と、左サイドへの大きな展開から、宮崎のクロスを大迫がファーサイドから叩きつけ、鹿島が同点に追いつく。
このままスコアは動かずに90分が終了し、試合は延長線に突入する。が、前半4分に米本が野沢へのファールで2枚目のイエローをもらって退場してしまい、このまま東京はPK戦狙いのために守りを固めるかと思われた。
ところが、大熊監督は平山を中盤に下ろして大竹を入れる攻撃的な采配で何とかしのいではいたものの、試合終了間際に本山のパスから最後は興梠が劇的な決勝ゴールを決め、鹿島が天皇杯決勝へと駒を進めた。
FC東京は、いざ攻撃の形が決まるとJ1でも屈指の力強さを見せられるのだが、平山の浮き沈み激しい調子に象徴されるように、それを90分、そしてシーズンを通して安定させることが出来ないという欠点を、この試合でも露呈させてしまったと言える。J2での戦いは、とにかく取りこぼしをしない事が大切であり、どこも東京に対してはがっちり守ってカウンターという戦術で徹底してくるであろうから、90分の中で何度も隙を見せてしまうようでは苦しいシーズンになってしまう危険性は少なくないように思う。
鹿島は勝ったとは言え、本山がいないと攻撃にスムーズさが欠け、興梠・大迫の2トップは器用なんだけど力強さがいまいち足らず、このしあいでも前半30分以降の苦しい時間帯には存在が消えてしまうなど、来季を考えると選手層の薄さが気になるところである。主力の世代交代も近付いているので、2トップや遠藤、宮崎といった若手の成長が今後のポイントになって来そうだ。