「魂の打ち合い」ナビスコカップ2010決勝 ジュビロ磐田-サンフレッチェ広島(5-3)

現代サッカーでは何よりもまず組織ありきで、サッカーもアメフトのような理詰めのスポーツになったかのような状況になってしまっているが、それよりも大事なものが確かに存在するのだな、と実感させてくれるような試合だった。
確かに、最初はジュビロの組織が試合を優位には運んでいた。
ジュビロはコンパクトな2ラインのゾーンを引いて、ワンタッチでパスを回して来る広島のボールを網で掬い取るかのような守備と速いサイド攻撃がうまくはまり、36分に前田のクロスをファーサイドから飛び込んだ船谷がフリーでヘッドを決めて先制する。
その後も広島が攻め倦む展開が続いたが、前半終了間際にそれまでほとんど出番が無かったミキッチがドリブルで2人を交わしてからのクロスを、李がダフりながらもコースに決めて、さらに後半開始早々にはオフサイドギリギリで抜け出した山岸がGK川口の股を抜くゴールと、広島らしからぬ個人の能力で逆転してしまう。
そこから磐田は組織をかなぐり捨てるかのように、サイドがどんどん上がって怒涛のように広島を攻め立て、広島もほぼ9バック状態になりながら良く耐え、これは広島が優勝かと皆が思い始めた後半44分に、CKから広島GK西川がはじいたボールを押し込んで何と延長へ。
延長に入るとほとんど両チームに中盤が無くなり、押し込んだもん勝ちのような状況になったところで、またもセットプレイから菅沼、ドリブルから山崎が決めてこれでもう磐田で決まりと思われたが、今度は広島が攻勢に出て磐田が防戦一方、そうなるとやはり試合は動くもので、延長前半終了間際に、やりなおしのFKを槙野が決めてまだまだ分からない。
が、延長後半3分に前田が個人技で広島の守備陣2人を突破し、角度の無いところから技ありのループを決めて、これでようやく本当に勝負あり。最後の最後で槙野がダイブ気味のPKをゲットして自分で失敗と言うパフォーマンスがついたのはご愛嬌で、磐田が12年ぶりの栄冠をゲットした。
と、簡単に流れを書くだけでも疲れたのだけれど(笑)、前半までは互いに「自分たちのサッカー」をやろうと汲々としていたチームが、いきなり吹っ切れて「自分のサッカー」になった事で、娯楽としては非常に面白く、見ていて熱くなれる試合だったように思う。槙野もパフォーマンスばかり注目されていたけど、延長での得点ではその事はすっかり頭から飛んでいたようだし、頭が真っ白になってこそサッカーだからね。
とは言え、いくらサッカーは一人で守るものではないとは言え、槙野と西川という代表候補がいるチームが5失点というのもちょっといかがなものか、という感じではあったけどね~。まあ広島にとっては、高さと展開力を兼ね備えたストヤノフがいなかった事が、こういったゴール前だけの試合では非常に痛かったというところだろう。