「『鳥取』にホームでドロー」EURO2012予選グループG イングランド-モンテネグロ(0-0)

2006年にセルビア・モンテネグロから独立し、2007年からFIFAに承認された、わずか人口65万人という、日本で言えば鳥取ほどの人口しか無いモンテネグロが、ユーロ予選でここまで3戦全勝、そして全勝同士で迎えたイングランドホームでの試合で、無得点ながらドローで勝ち点1をもぎ取るという快挙を成し遂げた。
モンテネグロは、時折カウンターは繰り出すものの、終始4-1-4-1、実質は9-0-1のフォーメーションで自陣にがっちりとしたゾーンを固め、さらにDFには190cm近い選手をずらりと並べる鉄壁の布陣を敷く戦術。
怪我人が続出しているイングランドは、序盤にクラウチが2度の決定機を作り出すなど楽観ムードが漂う立ち上がりだったが、徐々にモンテネグロの守備陣が落ち着いてくるとすっかり攻めあぐねてしまい、ルーニーがしびれを切らして何度も中盤に下がって来るのでクラウチが孤立し、サイドも中もスペースが無いのでジェラードやSBがほとんど上がれずに分厚い攻撃が繰り出せず、特に右SBのグレン・ジョンソンが酷い出来で、イングランドは攻撃の形というものはほとんど作れなかったと言って良い。
それでも、さすがは腐ってもイングランドで、ジェラードの鋭いサイドチェンジからSHのアダム・ジョンソンやアシュリー・ヤングが個人技で突破するシーンを作り出しはしたが、モンテネグロGKボジョビッチが素晴らしい出来で、至近距離から放たれたルーニーのシュートをはじき出すなど、最後までイングランドにゴールを許さない活躍ぶりだった。
モンテネグロは、それほど凄いテクニックを持った選手はいないものの、ボールを止めて蹴る技術がしっかりしており、フィジカルの強さは言うに及ばず、最後までカウンターを出す余力があり、ヨバノビッチがバーに当てるあわやというシーンを作り出すなど、とても鳥取県選抜とは思えないぐらいの平均的なプレイレベルの高さを見せ付けた。
イングランドは、コンビネーションがあまり無い割には一応チャンスも作っていたし、リオ・ファーディナンドは無難なプレイで復帰を飾り、アダム・ジョンソンやアシュリー・ヤング、交代で入った元中田の同僚デービスも好プレイを見せていたので、戦力の底上げが出来たという点では良かったのではないか。後半22分の明らかなPKハンドを見逃され、PKでもおかしくないヤングの突破をシミュレーションに取られた不運もあったしね。
これで残念ながらモンテネグロにはグループ首位を譲ったが、小国は選手層の薄さゆえにどこかで躓くパターンが多いので、取りこぼしせずに焦らず星を積み重ねていけば心配は無いだろう。