「オシムの教科書」南アフリカ・ワールドカップ 準々決勝 アルゼンチン-ドイツ(0-4)

今日からツール・ド・フランスが始まったせいでスカパーでのオシムの解説が見られなかったのは残念だが、もしオシムがまだ現役の監督だったならば、間違いなく4年間は教材として使うことになるような、組織が個を完璧に打ち破った試合だった。
アルゼンチンは、まさに戦術=メッシで、メッシがドリブルをすれば2~3人のマークは軽く突破してチャンスにつなげるのだが、それ以外の選手に規律というものがほとんど無く、ボールを持った選手の周りの選手だけがかろうじて動くが、反対サイドの選手は歩いているかポジションを空けてしまっているかで、均一にポジションを取るドイツとは全く対照的だった。
それでも、アルゼンチンはメッシを中心とした個の力でゴリゴリとドイツゴールに迫っていくのだが、ドイツは終始集中を切らさずに守り、ボールを奪ったら全員が労を惜しまずに走るコレクティブなカウンターで、ポジションバランスの悪いアルゼンチンの穴を突いていく。
そのドイツの執念というか、ゲルマン魂が如実に現れていたのが後半20分過ぎでの攻防で、PAのサイドへのアルゼンチンの絶妙なスルーパスをラームがスライディングでカットすると、カウンターからのポストプレイをミュラーが相手に倒されながらも足先だけでポドルスキーにパス、これが試合を決定付けるクローゼのゴールに結びついた。
この2点目でアルゼンチンの戦意は喪失してしまい、その後はそれまでよりもさらに輪をかけた無理なごり押し攻撃と、淡白なマーキングに終始してしまい、当たり前のようにドイツに2点を追加される惨敗でワールドカップを終えた。
メッシは結果的に無得点で終わってしまったが、運動量やキレという面でそれほどバルサの時に比べると劣っていたとは言えないが、高い位置にいてもボールが来ないのでプレイエリアが後ろに下がらざるを得ず、少ないシュートチャンスにもふかしてしまう事が多く、最後までジャブラニにアジャスト出来ていない印象だった。まあそれでも、彼に敗戦の全責任を負わせるのはあまりに気の毒だが。
これで準決勝はドイツとスペインというカードになったが、パラグアイに1-0で辛勝したスペインに比べるとドイツが有利なように見えるが、この大会は強いと思っていたチームがコロリと負けたりする事が多いだけに、あまり変に予想をせずに楽しもうと思う(笑)。