「浮上するスペイン艦隊」南アフリカ・ワールドカップ ベスト16 スペイン-ポルトガル(1-0)

大会の序盤では、イニエスタやトーレスが不調で相当出来を叩かれていたスペインだったが、ポルトガルとの一戦には何とか調子を仕上げて来たというところか。
グループリーグでは、コートジボワールはもちろん、相手が多少手を抜いていたとは言えブラジルにさえポゼッションで互角以上の戦いを見せていたポルトガルだったが、スペイン相手にはその路線をあっさりと捨て去り、バイタルを固めた4-3-3というフォーメーションで恥も外聞も無くカウンター勝負に出てきた。
そんな中でもスペインは、絶好調のビジャがいる左サイドを中心にポルトガルを攻め立て、まるでシュート練習のようにポルトガルゴールに対してボールの雨を降らせたが、ここまで無失点を誇るGKエドゥアルド、CBカルバーリョを中心とした鉄壁の守備でゴールは割らせず、逆に1トップのウーゴ・アウメイダを走らせる鋭いカウンターで危険なチャンスを作り出すがこれも得点にならず、流れとしてはややポルトガルに傾いた様子で前半を終える。
後半になると、多少勝利を意識し始めたのか、ポルトガルが少しずつ前に出て来るようになり、それまで亡霊のように存在が消えていたCロナウドにもボールが渡るようになったが、逆にこれをスペインが利用し、前半には見られなかった中央からの崩しにトライする場面が増えてくる。
そして18分に、スペインはポルトガルが人で埋めているバイタルエリアを針の穴を通すような正確なパス回しで切り裂き、最後に裏へと抜けたビジャがシュート、これを一旦はエドゥアルドが弾いたが、正面にこぼれたボールを再びビジャが蹴りこんで、スペインがとうとうポルトガルの堅い守備をこじ開ける。スペインはその後も、さらに前へと出ざるを得ないポルトガルに対して山のようにチャンスを作りはしたが追加点は奪えず、試合は1-0で終了した。
結果こそ最小得失点差ではあったが、やはり基本的には攻撃はCロナウド頼みのポルトガルと、スペインとの実力差が残酷にも露わになった内容だった。スペインは、トーレスはまだまだ本調子にはほど遠いが、ビジャは絶好調だしイニエスタも復調、シャビも彼らの復調で負担が減ったおかげで持ち前の軽快さが戻ってきて、ジョレンテは前線の基点として渋い働きを見せており、パラグアイに対しても問題なく勝ちあがれるだけの調子を取り戻してきていると言えよう。
ポルトガルは、スタメンではCロナウドをサイドに置いて基点を作ろうとしたのだが、結局は不慣れな守備に追われてボールに絡めず、後半からトップで守備負担を減らしたが今度はボールを支配されて孤立と、攻撃の柱である彼にほとんどボールが渡らない状態ではどうしようも無かった。
スペインは全ての選手のトラップが正確で、ドリブルやボールキープは常に動きながら、でもボールは足元から離さずと、相手が人数をかけていても全く問題にしないボール運びは、やはり今回のW杯出場チームの中では群を抜いた能力を持っていると言える。順当に行けば準決勝でアルゼンチンかドイツと対決するが、もしアルゼンチンになったら「バルサ-メッシ」のスペインとどういう試合になるのか本当に楽しみである。