「アンチフットボールとは呼ばせない」南アフリカ・ワールドカップ グループH スペイン-スイス(0-1)

なんか、W杯前に「日本負けろ」と書いた某スポーツライターが、日本がカメルーンに勝っても「退屈なアンチフットボールで勝ってしまって悲しい」みたいな事を書いていたらしく(直後にWEBでもアップ)、ネット上でも話題になっているようだが、個人的にはとりあえずカメルーン戦で逆張りしてくれてありがとうの一言ではあるが(笑)、この試合を見てどう書いてくるのか楽しみではある。
確かにスペインは、選手の動くスピードやパス回しにユーロで見せていたような軽快さが見られず、オシムの言うとおり選手に疲れやプレッシャーがあったのかもしれないが、同じく優勝を狙っているブラジルやイタリア、アルゼンチンも内容的には似たり寄ったりで、どうしても初戦は固くなるのとピークをなるべく後ろに持って行きたい思惑が重なり、そこで日本とカメルーンの試合同様に、守りを固める相手に1点を先に取られてしまった罠にはまってしまっただけの事であるように思う。
この試合ではスペインの不出来よりも、やはりスイスの見事な守りを褒めるべきで、あれだけスペインに振り回されながらも、日本のように最後はアップアップになる事も無く、後半にはスペインの守備の穴を突いてきっちりつないで押し返す場面を作るなど最後まで足と集中力が途切れず、さすがは欧州中堅にのし上がってきただけの地力を感じさせた。データ的にもそれは証明されていて、スイスは1試合目を消化した時点で、走行距離のトップをマークしている(日本は5位)。
加えてスイスの戦術についても特筆すべきで、スペインボールの時に1人の前線を残して残りの9人が4-5のゾーンを作って網を張るところまでは通常の引きこもり守備的陣形と変わらないのだが、後ろの4人が内側にかなり絞っていて、スペインにサイドを使われる事よりも、バイタルエリアから中央突破される事に対して重点を置く対策をしていた。
そして案の定、スペインはプレッシャーに緩いサイドには数え切れないぐらい侵入するものの、クロスは高さ自慢のスイス守備陣にことごとく跳ね返され、「メッシがいないバルサ」は中央を固めるスイスに対してドリブルで切れ込んで壁に亀裂を作り出すことすらままならなかった。日本はスイスほどの高さは無いけれど、ある程度オランダに対してサイドを攻めさせてバイタルのケアに専念するというやり方は、参考にする価値があると思った。
これでスペインは最悪の黒星スタートになってしまったわけだが、チリもホンジュラスも、スペインのサッカーに対しては比較的組みし易いタイプで、それほど悲観する必要はないと思う。ただ、コンディションは25日のチリとの試合までに上げておかないと、カウンターで人数をかけて来るチリの果敢な攻撃に足を再び掬われてしまうかもしれない。まずはホンジュラス相手にきっちりと勝ち、自信を取り戻す事が重要だろう。