CLファイナル ミラン-ユベントス(0-0 PK3-2)

結果だけ見れば120分間戦って無得点に終わっただけであるが、試合のペースはほとんどの時間をミランが握っていて、その内容に見合ったミランのPK戦による勝利だったと言える。
ユーベはネドベドの穴を埋めるために、先発から選手交代まで手を変え品を変えいろいろいじくってみたものの、レアル戦で見せたような本来の姿をついに見せる事が出来なかった。
最大の原因はもちろんカモラネージを起用した事である。4-4-2の右SHに入ったもののほとんどの時間をただ所在なげにウロウロするだけで、たまにボールをもらえばドリブルをして取られるだけの幽霊であった。
ユーベの攻めの基本は、カウンターから前の3人によるワンタッチの早いパス交換や、ネドベドの飛び出しからチャンスを作り、デルピエロがゴール前でボールをキープしてそこにザンブロッタやダービッツが分厚いフォローをするという形なのだが、カモラネージが消えていることによって10人で戦うがごとくトレゼゲやデルピエロの位置が自然と低くなり、ミランにとって全く怖さの無い展開になってしまった。
カモラネージは守備面でも戻りが遅く、それによって空いた中盤をケアするためにダービッツの負担が増え、右サイドはザンブロッタの孤立、真ん中ではピルロやルイコスタのパスを容易に出させてしまう原因にもなってしまった。
後半からはコンテを起用して4-3-1-2にする事でコンパクトになり、お得意のプレスから前半は守備しかしていなかったテュラムのオーバーラップなどで盛り返し始めるが、ネドベドの代役となるには気の毒なコンテのシュート精度の悪さやデルピエロの凡ミスで、最後までミランに脅威を与える事は出来なかった。これではヂダが気力満々でPK戦に望めたのは無理は無い。
対するミランは、ガットゥーゾを筆頭として個々の守備意識が非常に高く、絶妙のラインコントロールでコンパクトさを保って常にユーベの前線をDFと中盤で挟み込むようにボールを奪うヌオボ・カテナチオとでも呼ぶべき守備が見事だった。
そして攻撃では、スペースを埋めてプレスの罠にかけようとするユーベの守備陣の、さらに外側にシェフチェンコなどを張り出させ、ピルロやルイコスタの正確なパスを受けて起点となる事でポゼッションをキープし、分厚い攻撃をかける事が出来た。実は、この攻め方はアヤックスがミランに対して行ったのとほぼ同じ方法なのである。
ネドベドの代わりがいないのにネドベドがいた時の攻め方しか出来なかったユーベと、最も苦しんだ対戦相手のやり方を自分のものにしていたミランでは、戦う前から勝負はついていたのかもしれない。