ミニコラム:セリエAの移籍動向

セリエAのEU域外選手枠の制度が、獲得は各チーム1シーズン1人に限られ、しかも1人を獲得した場合すでに所属しているEU域外選手1人の放出を義務付ける制度が発足した。これで「日本人移籍ピンチ」などとメディアは煽っているが、個人的には逆にチャンスが増えるのではないかと思っている。
だいたい、今の欧州でEU外選手の分類としては、実力の南米、安さの東欧・アフリカ、マネーのアジアというところである。今までの制度であれば、まず南米を何人か、あとは将来性やマネーを考えてアフリカや日本から取っておき、出場は結局南米選手中心という感じになる可能性が高かったわけだが、新しい制度では優先順位を付けて複数選ぶのではなく、どれか一つを選ぶという選択になってくる。
ご存知のように、最近では欧州のTV放映権バブルが崩壊し、プロビンチアは若くて将来性のある選手を育て、それを放映権で潤ったビッグクラブが高く買うというビジネスモデルが機能しなくなっている。そうなると、欧州のTV以外の部分で金を儲ける必要性が生じてくる。つまり、入場料収入、グッズ販売収入、国外への放映権販売、そしてスポンサーである。この点、南米や東欧、アフリカはかなり弱い。とすると、白羽の矢が立つのはどうしてもアジア選手という事になる。
しかし、いくらマネーの為とは言え、チームが降格してしまっては話にならないわけで、しかも育てても高く売れる保証が無いと来れば、ある程度即戦力として期待できて、出来ればスポンサーマネーで移籍金が相殺できる選手が、プロビンチアにとっての獲得候補になるのではないか。
最近、菊地は別としても、柳沢や小笠原、藤田、福西などが移籍候補に上がってきているのは、そういう理由があるのだと思う。
つまり、違う言い方をすれば、日本の大学のように入るのは難しくて出る(出場する)のは易しい環境になったわけだ。ただし、裏口入学のスポンサーは必要かもしれないが(笑)、志のある中堅選手はどんどんチャレンジしてみるチャンスではないだろうか。