書評 「サッカーという至福」 武智幸徳 日本経済新聞社

99年初版とちょっと古いが、正月休みのひまつぶしに図書館で借りて読んで見た。
さすがに新聞社の記者でありながら日本有数のサッカージャーナリストと言われるだけあって、正確な考証を元にした洞察力で、サッカーの魅力を粘っこく表現している。
特に、中田を評した部分で「スルーパスより、中田は、クロスの方がよほど上手だと私は思う。正直言って、中田がペナルティーエリアのアーク手前でボールを持っても胸はどきどきしない。『シュートがあるかな』という予感はしても、そこからスルーパスが通るような気がしない」とあるのは、中田のスルーパス信仰が世間で最高潮だった4年前とは思えない慧眼である。もちろん、良さであるキープの仕方や重心の低さなどもきっちり書かれている。
ただ、惜しむらくは考証が豊かであるだけに、書かれていることを実際に見たりした人間にしかニヤリと笑えない事である。「フランチェスコ・モリエロは、優勝した82年大会のブルーノ・コンティほどの技巧も狡猾さも無かった」と書かれていても大半の人は「ハァ?」だろう。そういう意味では、さも見てきたかのように脳内で事実と事実を補完して物語を作るNumber系ライターの方が一般受けするんだろうなと感じてしまうのが悔しいところである。
ともかく、長いサッカーファンには100%楽しめる、にわかでも本物の勉強と薀蓄の宝庫である本なのは確かだ。この本を見て分からないときは過去のW杯ビデオを見ておさらいしてみれば、その深さにうならされる事は間違いない。

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