コネの力学

中村の出来についてはカフェのミツオミーノさんとフリータイプ氏の分析が秀逸だが、おそらく前半と後半とで全く印象が違ったせいがあるからだろうと思うが、その実効性についての見解が分かれているのが面白い。では何故前半の中村は怖かったのだろうか。それは、中村のコネが常に前向きのベクトルを持っていたせいだと思っている。
ここでは一貫して、現代サッカーではゴール前にいかに数的優位の状況もしくはフリーの人間を作るかが重要であるかを唱えているが、コネが前向きであればマークに付いた人間の代わりに前にいる別の人間がチェックに行かなければならず、またDFのラインも下がりながらの応対が必要になってくる。つまり局地的には数的有利、ゴール前ではフリーの状況が生まれやすくなる。しかし、後半にサイド奥でコネた場面のように1タッチ目で交わせずにその場だけでコネても、局地的にはどんどん不利になるしDFも動かなくて済んでしまい、結果的に実効性が著しく落ちるのだ。
パルマではムトゥとアドリアーノがコネ性向の強い選手だが、常に前向きのベクトルを持っている上に最近では球離れの判断が身についてきて(昨日は持ちすぎが目立ったが・・・)、そこがパルマの結果と内容に如実に表れている。また、高原が得点王になったのは勝負の意識が強くなったからだと言われているが、個人的には常に前向きを意識しつつ無理な時は簡単にパスを回す判断が出来るようになってきた事も原因ではないかと思っている。要はコネも使い分けなのだ。
しかし中村にとって、前向きの競り合いやかわし方が見られるようになってきたのは、逃げパスかその場コネが多いJサッカーから卒業しつつある証だと言える。黒魔術師レベル5ぐらいにはなったかもしれない。と言っても周りの動きや戦術の助けがレッジーナにはまだ足りないのは確かだが、頑張って判断を高めていって欲しいものだ。